冷凍の基礎知識

冷凍の基礎知識

食品や組織を冷却していくと、様々な反応を抑えることができます。 特に水が氷になる温度になると、反応は大幅に遅くなり、変化のスピードは著しく低下します。
食品ですと、冷凍することにより、微生物による腐敗、化学反応や酵素反応による栄養素、色、味の変化、水分蒸発など食品の品質を低下させるすべての反応を抑えることが可能になります。
そのため、食品は冷凍することで、色、味、香り、栄養成分、鮮度等、食品が持つ本来の性質と 状態を長く保存できます。
冷凍が、他の保存法(缶詰、乾燥、塩蔵、冷蔵など)とは異なり、農産品や畜産品、水産品といった食品素材を品質を保ったまま長期間保存できることや、調理食品を解凍後に出来立てに近い状態で食べられることは、このような理由のためです。

冷凍環境下では様々な活動が遅くなる

品質を維持したまま長く保管が可能

一方で、食品や組織中における氷の生成は、組織や細胞に大きなダメージを及ぼします。
この原因として、水が氷に変化すると、体積が約10%増加し、組織や細胞の微細構造を物理的に破壊すること、生成した氷結晶が周囲から 水分を奪って、大きく成長することが挙げられます。
特に冷却速度が遅い場合は、氷結晶の成長速度が速く、個々の結晶は大きくなります。さらに、組織中に含まれていた水分に偏りが生じる ことによる傷害も加わります。
凍結した食品の食感が悪くなる、食材中に含まれていた水分が漏れて外に出てしまうのは、これらが原因です。
組織や細胞のダメージを防ぐためには、氷の結晶をできるだけ小さく抑え、組織中の水分の偏りを生じにくくする必要があります。
冷凍食品メーカーでは水分量をコントロールし、低温で急速凍結することで、凍結時の品質変化を防いでいます。

図:緩慢凍結と急速凍結したバチマグロ筋肉内の氷結晶組織の比較

急速凍結で微細な氷結晶が作られたとしても、貯蔵中に氷結晶は大きく成長してしまいます。 これは「氷結晶の再結晶化」と呼ばれるものです。
冷凍貯蔵中ではわずかに水分の移動が起こり、これが氷結晶の再結晶化や霜の発生、表面の乾燥に大きく関係しています。 この水分の移動は、貯蔵温度が高い場合や温度変化がある場合に、促進されます。
そのため、再結晶化を防ぐには、可能な限り低温で保存し、貯蔵時の温度変化を避ける必要があります。

図:バチマグロをマイナス40℃で凍結保存した時の氷結晶の変化