ニチレイ食品ロス研究所
ニチレイ食品ロス研究所

食品ロスとは

  • 本来食べられるはずなのに捨てられてしまう食品のこと。

    日本では、
    年間 523 万トン
    にのぼります。

    多くの食品は、腐敗・劣化しやすく、
    おいしく食べられる期間が短いことが食品ロスの大きな原因です。

    ※令和3年度推計(農林水産省・環境省)

01 食べられなくなるの科学

  • 1

    食品が食べられなく
    なるとは?

  • 2

    おいしく安全に
    食べられる状態を
    保つには?

  • 3

    長持ちのための
    温度と水分の
    ポイント

  • 4

    保存食の長持ちの
    メカニズム

    温度
    コントロール

  • 5

    保存食の長持ちの
    メカニズム

    水分
    コントロール

  • 6

    保存食の長持ちの
    メカニズム

    微生物排除

  • 7

    もっとおいしさと
    安全を

    長持ちのための
    研究

食品が食べられなくなるとは?

そもそも、食品が「食べられなくなる」というのは
どういうことでしょうか?
食べると健康に問題のある状態 と、健康には影響がないが
味や見た目、匂いなどに問題がある状態
(本来のおいしさが失われた状態)
に分けて原因を考えてみます。

  • 腐敗

    食べると健康に問題のある状態になること

    原因

    有害な微生物
    (食中毒の原因菌、腐敗菌、
    有害なカビ菌など)

    腐敗とは、微生物が活動・増殖しながら食品の成分を分解することで、人体に有害なものに変わってしまう(※)ことです。
    なお、食中毒菌が活動・繁殖した場合、味や見た目などには変化がなくても、食べると健康に問題のある状態になっていることがあります。

    ※微生物が働いた結果が人にとって有益な場合は、「発酵」と呼ばれます。

  • 劣化・変質

    味や見た目、匂いなどに問題がある状態になること

    原因

    無害な微生物

    私たちの周りにはさまざまな微生物がいます。例えば、料理の中にいた乳酸菌が活動・増殖すると、味が酸っぱく変化しますが、食中毒にはなりません。

    酵素

    野菜や果物などには酵素が含まれていて、その働きで色や香りがなどが変化します。野菜や果物の切り口が茶色っぽく変色するのは、酵素の働きが主な原因です。

    細胞の活動(呼吸など)

    野菜や果物などは、収穫後も細胞が生きて呼吸しています。呼吸には、糖分などの栄養分が使われてしまうので、活発に呼吸をしている状態が続くと、だんだんおいしくなくなり、栄養価も低下します。

    酸素

    酸素と結びつくことを「酸化」といいます。食品の色素や香りの成分、油脂などは酸化しやすく、味や匂いが悪くなったり、栄養価にも影響します。

    光や熱

    光(特に紫外線)や熱は、食品成分の酸化を起こりやすくします。熱は食品の微生物や酵素の働きを活発にしたり、乾燥にもつながります。

    水分変化

    味や食感などは、水分に影響されます。水分が蒸発してしまう「乾燥」のほか、煎餅がしけったり、揚げ物の衣がベチャッとなるなど、水分の移動によって本来のおいしさが損なわれることもあります。

「おいしく安全に食べられる」状態を保つには?

食品が食べられなくなる「腐敗」「劣化・変質」を防ぐためには、原因(微生物など)を排除するか、働きを抑えることが必要です。

  • 腐敗、劣化・変質の原因を
    排除する

    • (製造時に)加熱などで微生物を殺菌する
    • (製造、保管時に)微生物が入らないように衛生管理する
    • (製造、保管時に)酸素、光、熱などから遮断する

    腐敗、劣化・変質の原因の働きを
    抑える

    微生物などは、活動・増殖するのに必要な条件があります。その条件を知ってコントロールすることで、働きを抑えます。食品保存のためにコントロールしやすい条件が、温度と水分です。

保存食の長持ちのメカニズム
温度をコントロールして長持ち

  • 保存食(長くおいしく食べられるようにした食品)は、
    温度や水分等をコントロールして働きを抑える、
    もしくは、腐敗や劣化の原因を排除するというメカニズムを利用して長持ちさせています。

    温度をコントロールして長持ちさせる保存方法には、以下のようなものがあります。

  • 冷蔵

    長持ちのメカニズム・メリット

    保存温度を下げることで、微生物の活動・増殖を抑える。
    食中毒の原因菌や腐敗菌の多くは、10℃以下では活動が鈍って増殖が抑えられる。

    デメリット

    保存中に水分移行が起き、食感や水分量が均質化してしまう(揚げ物の衣に具の水分が移ってベチャッとなる、など)
    微生物や酵素、細胞の呼吸などの活動が鈍くはなるが、停止するわけではないので、特に生鮮食品の保存期間は比較的短い
    保存に電力などのエネルギーが必要(寒冷地で氷雪を利用する場合以外)

    食品例

    ほとんどの食品に有効

  • 冷凍

    長持ちのメカニズム・メリット

    微生物は、−15℃以下になるとほぼ活動を停止する。−18℃以下では、食品の酸化や酵素の働きなども抑えられる。また、冷凍することで食品中の自由水も凍結し、微生物が利用できる水はほぼなくなる。

    -18℃以下で保存する冷凍食品は、保存料を使わなくても味や香りなど本来の品質やおいしさを保ったまま、長期保存が可能

    できたて 獲れたて 最適な熟度の状態を長く保存できる!

    さらに、自由水が凍結されることで、冷蔵保存で起こる水分移行による食感の変化も、冷凍では抑えられる。

    揚げ物の衣がサクサクした状態を保てる、うどんやパスタにコシがある状態を保てる、など

    長持ち以外の冷凍保存のメリット

    アニサキス食中毒の予防

    冷凍処理(-20℃24時間以上)によって、魚介類に寄生するアニサキス幼虫は感染性を失う。

    栄養素の増加

    冷凍することによって、酵素反応の促進、冷凍熟成が起こり、以下のような食品の栄養素が増加。

    • しじみ(オルニチン)
    • きのこ(5’-GMP)
    • 牡蠣(遊離アミノ酸)

    デメリット

    • 凍結・解凍時に細胞中に氷の粒ができ、食品の微細構造を破壊する。そのため、解凍された肉や魚介からドリップがでたり、野菜の食感が凍結解凍によって変わったりしてしまう。
    • 凍結・保存・解凍に、多くの(電力)エネルギーが必要

    デメリットをメリットに変換!

    多孔質構造の形成、組織の破壊

    「細胞中に氷の粒ができ、微細構造を破壊」という冷凍のデメリットを、食品の組織を意図的に破壊してやわらかい食感にしたり、冷凍・解凍によって多孔質構造をつくるなど、メリットとして利用している食品もあります。

    • 形状を保持したバリアフリー介護食(凍結含侵法)
    • 高野豆腐(フリーズドライ)

保存食の長持ちのメカニズム
水分をコントロールして長持ち

  • 保存食(長くおいしく食べられるようにした食品)は、
    温度や水分等をコントロールして働きを抑える、
    もしくは、腐敗や劣化の原因を排除するというメカニズムを利用して長持ちさせています。

    水分をコントロールして長持ちさせる保存方法には、以下のようなものがあります。

    乾燥 塩蔵 糖蔵 酢漬け
    乾燥 塩蔵 糖蔵 酢漬け
  • 乾燥

    長持ちのメカニズム・メリット

    水分を除去することで、微生物の活動・増殖を抑える。
    そのまま干す「素干し」(干し椎茸、昆布など)と、塩に漬けてから干す「塩干し」(あじの干物など)がある。「塩干し」は、塩漬けによる自由水の減少効果も加わるので、全体の水分量は多めでも保存性が高くなる。

    デメリット

    食感、風味が変化する
    ※調理方法の一つとして、メリットにもなる。栄養素が素材のときとは変化するものもある。

    食品例

    乾燥野菜・海草・フルーツ、魚介類の干物、乾燥肉など

  • 塩蔵(塩漬け)

    長持ちのメカニズム・メリット

    塩を加えることで、食品中の自由水が塩と結びついて結合水となり、微生物の利用できる水を減らす。塩分濃度20%程度にすると、水分活性は0.85程度となり、食中毒の原因菌などは増殖できない。
    また、塩水の高い浸透圧で微生物の細胞内から脱水させることで、働きを抑える効果もある。

    デメリット

    味や食感が変化する
    ※調理方法の一つとして、メリットにもなる

    食品例

    漬け物、塩辛、新巻鮭など

  • 糖蔵(砂糖漬け)

    長持ちのメカニズム・メリット

    糖類(砂糖など)を加えることで、食品中の自由水が糖と結びついて結合水となり、微生物の利用できる水を減らす。ただし、塩蔵と比べて、同じ保存効果を得るためには濃度を高くする必要がある(※)。糖分濃度60%程度にすると、水分活性は0.9程度となる。
    また、砂糖水の高い浸透圧で微生物の細胞内から脱水させることで、働きを抑える効果もある。
    ※糖類は食塩より分子量がはるかに大きい。そのため、同じ重量に含まれている分子数は少ないので、結びついて結合水にできる水分子の数が少ない。

    デメリット

    味や食感が変化する
    ※調理方法の一つとして、メリットにもなる

    食品例

    ジャム、シロップ漬けなど

  • 酢漬け

    長持ちのメカニズム・メリット

    多くの微生物は中性(pH7)を好むので、酢(pH3程度)を加えて酸性の環境にすることで、活動・増殖を抑える。
    また、酢が自由水と結びついて結合水にする効果も期待できる(ただし、味の面で塩蔵、糖蔵ほどには酢の濃度を高くできないので、結合水にする効果は低め)

    デメリット

    味や食感が変化する
    ※調理方法の一つとして、メリットにもなる

    食品例

    ピクルスなど

保存食の長持ちのメカニズム
微生物を排除して長持ち

  • 保存食(長くおいしく食べられるようにした食品)は、
    温度や水分等をコントロールして働きを抑える、
    もしくは、腐敗や劣化の原因を排除するというメカニズムを利用して長持ちさせています。

    微生物など腐敗や劣化の原因を排除して長持ちさせる保存方法には、以下のようなものがあります。

    缶詰・レトルト 燻製
    缶詰・レトルト 燻製
  • 缶詰・レトルト

    長持ちのメカニズム・メリット

    密封した上で、微生物を加熱殺菌する。光や酸素からも遮断できるので、常温で長期保存が可能。

    デメリット

    加熱による食感の変化
    ※調理方法の一つとして、メリットにもなる
    ・加工や保存中に水分移行が起き、食感や水分量が均質化してしまう

    食品例

    農水産物の缶詰、レトルトカレーなど

  • 燻製

    長持ちのメカニズム・メリット

    いぶす際にでる煙は微生物の殺菌、滅菌などの効果がある。また、いぶすことで食品表面に樹脂膜ができ、外部からの微生物の進入を防ぐ。
    さらに、ほとんどの食品はいぶす前に塩漬けにすることで、自由水が減る。いぶした後には乾燥させることで水分量が減るなど、複合的な保存効果を利用している。

    デメリット

    独特の味や香りがつく
    ※調理方法の一つとして、メリットにもなる

    食品例

    鰹節、ベーコンなど

長持ちのための
温度と水分のポイント

多くの食品で、長くおいしく食べられる状態にしておくためのポイントは、温度と水分のコントロールです。

  • 温度 温度 低温にすることで、
    腐敗・劣化の原因の働きを抑える

    食品の腐敗、劣化・変質の原因のほとんどは、低温にすることで働きを抑えることができます。

    温度と活動の関係

    【10℃以下】
    食中毒の原因菌や腐敗菌の多くは、10℃以下では活動が鈍ってあまり増えなくなります。冷蔵庫は、この温度を目安にしています。

    【−15℃以下】
    食中毒の原因菌や腐敗菌の多くは、−15℃以下になるとほぼ活動を停止(※)します。そのため、食品衛生法での冷凍食品の保存・流通の基準温度は、−15℃以下です。 ※ただし、死滅しているわけではないので、温度が上がると活動を再開する

    【−18℃以下】
    食品の酸化や酵素の働きなどは −18℃以下にするとかなりおさえられるので、日本の冷凍食品業界では、保存・流通の温度を自主基準で−18℃以下と定めています。

    水分 水分 微生物などが利用できる水分を減らすことで、活動をおさえる

    微生物が活動・増殖するには、水分が必要です。乾燥させるなど、食品中の水分を減らすことで、微生物の働きを抑えて腐敗を防げます。

    自由水と結合水

    塩漬けや砂糖漬けなど水分量が多めでも腐敗しにくい食品もあります。これは、水分の中に、微生物が利用できる水(自由水)と利用できない水(結合水)があるからです。
    結合水は、食品中の成分と結びついていて、自由に動けない水。塩漬けや砂糖漬けでは、食品中の自由水が塩や砂糖と結びついて結合水になるため、自由水の割合が減って微生物が活動しにくくなるのです。

    水分活性

    自由水と結合水の割合を計る「水分活性」という指標(自由水100%で水分活性1.00)があります。多くの食中毒の原因菌は水分活性0.9以下、カビは0.8以下では増殖できません。水分活性を0.5以下にすれば、ほとんどの微生物の増殖を抑えられます。

「もっとおいしさと安全を長持ち」のための研究例

  • 不凍タンパク質

    食品を冷凍すると、食品中の水分が氷になることにより、食品の組織が一部壊れてしまいます。氷の結晶が大きくなるにつれて、食品の組織へのダメージは大きくなります。急速凍結することで、氷の結晶が大きくなることを防いでくれますが、冷凍保管中も氷の結晶が徐々に大きくなってしまいます。不凍タンパク質は寒冷地の一部の生物が蓄えているタンパク質です。氷の結晶にくっつく性質があり、氷が大きくなることを防いでくれます。この原理を活用し、氷の結晶による品質変化を防ぐことに取組んでいます。

    蓄冷技術
    (温度変化、温度上昇による品質低下を防ぐ)

    温暖化の影響により、真夏の買い物帰りの冷凍食品の温度上昇が心配になります。また、通販や宅配の進化により、クール品の需要が高まっていますが、温度管理が必要なため置き配達が難しいという課題があります。ドライアイスの高騰もあり、保冷剤が注目されています。保冷剤は求める温度で長く保冷できることで、冷凍食品の品質変化を防いでくれます。そのための、技術開発に取り組んでいます。

    保存中の霜の付着をなくす技術

    水分が多く、表面積が大きい冷凍食品(例:冷凍野菜、バラ凍結の肉)や包装氷は冷凍保管中の温度変化等により霜がついたり、食材と食材がくっついたりしてしまいます。それを解決するための技術開発に取り組んでいます。

    水分移行防止技術
    (サクサクをもっと長持ち)

    揚げたて、茹でたて、焼きたての食品は美味しく感じられるかと思います。その美味しさの理由の一つに、食品中の水分分布が影響しています。食品は保管中に水分が動いてしまいます。水分が蒸発して食品が乾燥したり、麺がのびたり、衣がサクサクしなくなったりするのはそのためです。冷凍では水分が凍って水分移行が抑えられるため、これらの変化は他の食品保存法と比べると少ないですが、保管期間が長くなると、少しずつこのような変化が出てきます。これらの変化をできるだけ減らすための技術開発に取り組んでいます。

    退色防止技術
    (野菜の色の変化をもっと防ぐ)

    野菜や果物の色は光や酸素、加熱、酸、酵素といった様々な影響により、保管中に変化してしまいます。この変化は冷凍することで抑えられますが、冷凍保存は野菜を通常よりも長く保管することになるため、徐々に色の変化が起こります。色が変わることで食べられなくなることはありませんが、見た目が悪くなると、美味しく感じられないといったことはあるかと思います。そのための技術開発に取り組んでいます。

02 サプライチェーンと食品ロス

フードサプライチェーンでの
食品ロスはなぜ発生するのか

食品ロスがこれほど多くなった背景には、
食品の生産から消費までの流れ(サプライチェーン)における問題があります。

  • 食品ロスはどのプロセスで
    発生する?

    私たちの食生活を支えるサプライチェーンの流れと、どこでどんなロスが発生しているのかを見てみましょう。

    01生産 02保管 03流通製造・加工 04卸売・小売 05外食 06消費 01生産 02保管 03流通製造・加工 04卸売・小売 05外食 06消費
  • 食品ロス削減に向けた
    サプライチェーンの取り組み

    食品ロス削減は、サプライチェーン全体で取り組む必要があります。現在のおもな課題と取り組みを見てみましょう。

    食品ロス削減は、サプライチェーン全体で取り組む必要があります。現在のおもな課題と取り組みを見てみましょう。

【参考資料】
環境省「食品ロスポータルサイト」
農林水産省食料産業局「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢」2020年
編集:国際連合食糧農業機関、翻訳・発行:社団法人国際農林業協働協会「世界の食料ロスと食料廃棄」2011年
日本有機資源協会「平成22年度食品廃棄物発生抑制推進事業報告書」2011年
消費者庁「食品の期限表示に関する情報」
消費者庁「食品の期限表示」
消費者庁「知っていますか 食品の期限表示?」

食品ロスはどのプロセスで
発生する?

  • 01 生産 [産地]

    • 収穫前の損傷:風雨による被害、虫害、飼育中の死亡や病気
    • 収穫時の損傷:作物が農業機械に巻き込まれる、魚が水揚げ時に欠ける
    • 規格外   :未成熟、形状やサイズの不適合
    • 生産余剰  :需要見込み違いによる作りすぎ

    農作物の収穫後から流通までの間に生じるロス
    (ポストハーベスト・ロス)

    02 保管 [倉庫]

    • 保管時の損傷:腐敗や劣化、虫害

    03 流通 製造・加工 [工場]

    • 過剰な除去:皮や骨など不可食部を取り除く際に、周辺の可食部も余分に除いてしまう
    • 規格外  :製造加工時の割れ、欠け、焦げなどの破損・汚損や、サイズの不適合
    • 製造余剰 :欠品、品切れによる販売機会の損失を避けるために多く製造する

    食品製造業から
    発生するロス
    125万t

    04 卸売・小売 [市場・物流センター]

    • 在庫余剰 :欠品、品切れによる販売機会の損失を避けるために在庫を多く保有する
    • 破損・汚損:商品自体の品質には問題のない、ダンボール等外装の傷みや汚れ
    • 返品   :「3分の1ルール」に基づく納入期限、販売期限切れ商品の返品

    製造から消費までのプロセスにおいては、「3分の1ルール」という商慣習上の決まりごとがあります。

    製造、卸売→小売

    賞味期限の前3分の1の期間までに納品しなくてはならない。
    例:賞味期限が6ヶ月の場合、製造から2ヶ月以内に納品する。

    小売→消費者

    賞味期限の後3分の1の期間までを販売期限としなくてはならない。
    例:賞味期限が6ヶ月の場合、製造から4ヶ月を過ぎたら販売しない。

    卸売業から
    発生するロス
    13万t

    小売業から
    発生するロス
    62万t

    05 外食 [外食店]

    • 食べ残し:料理の提供量が多すぎて客が食べきれない
    • 調理余剰:客数の予測、需要見込み違いによって作りすぎてしまう

    外食産業から
    発生するロス
    80万t

    06 消費 [食卓]

    • 食べ残し :調理する量が多すぎて食べきれない
    • 直接廃棄 :賞味期限切れ等の理由で未使用・未調理のまま廃棄
    • 過剰な除去:皮や骨など不可食部を取り除く際に、周辺の可食部も余分に除いてしまう

    家庭から
    発生するロス
    244万t

    ※食品廃棄物等の利用状況等(令和3年度推計)

    01 生産 [産地]

    • 収穫前の損傷:風雨による被害、虫害、飼育中の死亡や病気
    • 収穫時の損傷:作物が農業機械に巻き込まれる、魚が水揚げ時に欠ける
    • 規格外:未成熟、形状やサイズの不適合
    • 生産余剰:需要見込み違いによる作りすぎ

    02 保管 [倉庫]

    保管時の損傷:腐敗や劣化、虫害

    農作物の収穫後から流通までの間に生じるロス
    (ポストハーベスト・ロス)

    03 流通 製造・加工 [工場]

    • 過剰な除去:皮や骨など不可食部を取り除く際に、周辺の可食部も余分に除いてしまう
    • 規格外:製造加工時の割れ、欠け、焦げなどの破損・汚損や、サイズの不適合
    • 製造余剰:欠品、品切れによる販売機会の損失を避けるために多く製造する

    食品製造業から発生するロス
    121万t

    04 卸売・小売 [市場・物流センター]

    • 在庫余剰:欠品、品切れによる販売機会の損失を避けるために在庫を多く保有する
    • 破損・汚損:商品自体の品質には問題のない、ダンボール等外装の傷みや汚れ
    • 返品:「3分の1ルール」に基づく納入期限、販売期限切れ商品の返品

    製造から消費までのプロセスにおいては、「3分の1ルール」という商慣習上の決まりごとがあります。

    製造、卸売→小売

    賞味期限の前3分の1の期間までに納品しなくてはならない。
    例:賞味期限が6ヶ月の場合、製造から2ヶ月以内に納品する。

    小売→消費者

    賞味期限の後3分の1の期間までを販売期限としなくてはならない。
    例:賞味期限が6ヶ月の場合、製造から4ヶ月を過ぎたら販売しない。

    卸売業から発生するロス
    13万t
    小売業から発生するロス
    60万t

    05 外食 [外食店]

    • 食べ残し:料理の提供量が多すぎて客が食べきれない
    • 調理余剰:客数の予測、需要見込み違いによって作りすぎてしまう

    外食産業から発生するロス
    81万t

    06 消費 [食卓]

    • 食べ残し:調理する量が多すぎて食べきれない
    • 直接廃棄:賞味期限切れ等の理由で未使用・未調理のまま廃棄
    • 過剰な除去:皮や骨など不可食部を取り除く際に、周辺の可食部も余分に除いてしまう

    家庭から発生するロス
    247万t

    ※食品廃棄物等の利用状況等(令和2年度推計)

    食品ロスの発生には前後のプロセスが相互に関連しているため、
    削減に向けてはチェーン全体の連携が不可欠です。

食品ロス削減に向けた
サプライチェーンの取り組み

  • 途上国での食品ロスはサプライチェーンの上流である生産や保管段階でのロスが多く、 先進国では下流の消費に至る段階で増加する傾向が見られます。

    とくに日本での食品ロスは、生産・在庫余剰や返品など、商慣習や生活様式に起因するところが大きく、個々の企業や業種の努力だけでロス削減できるものではありません。
    そこで近年、関係省庁や企業、団体が協力して、話し合いの場である「商慣習検討ワーキングチーム」を設置したり、
    納品期限(3分の1ルール)を緩和したりするなど、プロセスの垣根を超えて商慣習の見直しを図っています。

    おもな課題

    • 納品期限・販売期限に関する商習慣「3分の1ルール」
    • 先に仕入れた商品の賞味期限より、賞味期限が前になる商品は仕入れない「先入れ先出しルール」
    • 販売機会の損失を避けるための生産・発注・在庫余剰

    おもな取り組み

    • 小売・サプライヤーによる食品廃棄物の半減に向けた「10×20×30食品廃棄物削減イニシアティブ」日本プロジェクト始動
    • 商慣習検討ワーキングチームの設置
    • 製造・卸売・小売一体となっての納品期限の見直し
    • 賞味期限の年月表示化
    • 賞味期限の延長
    • フードバンクの活用

03 コールドチェーンで
食品ロスを減らす

サプライチェーンを冷力でサポート

サプライチェーンで発生するさまざま食品ロスを減らすには、どうしたらいいのでしょうか。
ここでは、ニチレイの基幹事業のひとつである低温物流の観点から、食品ロスを考えます。

  • コールドチェーンって何?

  • コールドチェーンの
    歴史

コールドチェーンにできること

肉・魚・野菜などの生鮮品から冷凍食品などの
加工品まで、さまざまな食品に利用されるコールドチェーン。
食品ロス削減に向けて、どんな貢献ができるのでしょうか。

  • 一貫した温度管理で
    食品を守る

    コールドチェーンの強みは、
    何といっても温度管理。

  • 何がいいの?
    食品を冷凍する
    メリット

  • 生産段階の
    ロスを減らす

  • 流通段階の
    ロスを減らす

  • 消費段階の
    ロスを減らす

コールドチェーンって何?

  • 「コールドチェーン(低温物流体系)」 とは?

    産地から食卓まで、冷蔵や冷凍の温度帯を保ったまま流通させる仕組みのこと。食品のほか医療分野や花きなどの流通に利用されています。

    何のため?

    コールドチェーンの役割

    • 鮮度の維持
    • 衛生状態の確保
    • 需給調整や価格の安定

コールドチェーンの歴史

  • 60年代から発展、人々の食を支えるインフラに

    国民の食生活改善をめざして

    コールドチェーンは1950年頃にアメリカで生まれ、日本では1965年に当時の科学技術庁資源調査会が出した「コールドチェーン勧告※」を機に、本格的に整備が進められました。
    勧告の目的は、国民の食生活改善と健康水準の向上。健康な体をつくるには、肉や魚、野菜や卵などをもっと摂取すべきで、そのためには腐りやすい食材を新鮮な状態で産地から食卓に届ける物流体系が必要だと考えたのです。

    ※正式名称は「食生活の体系的改善に資する食料流通体系の近代化に関する勧告」

    冷蔵庫の普及・外食産業の隆盛

    70年代以降、各家庭には冷凍室付き2ドア冷蔵庫が普及。生鮮品だけでなく冷凍食品の需要も高まりました。小売業では大型スーパーやコンビニエンスストアが出現し、事業の一環としてコールドチェーンを構築。外食産業ではセントラルキッチン方式を採用したファミリーレストランやファストフード店が誕生。半調理品や冷凍食材を各店舗に届けるにはコールドチェーンが不可欠でした。

    ニチレイも黎明期から貢献

    さまざまな事業者がコールドチェーン整備を進める中で、冷凍食品のパイオニアであり、製氷・水産業をルーツに持つニチレイもまた、コールドチェーン黎明期から整備に尽力。各地の冷蔵倉庫を拠点に、全国を網羅する低温物流ネットワークを築き上げました。

    人々の食を支えるインフラに

    現在は、内食、外食に加え、デパ地下の惣菜などを指す中食が加わるなど、日本人は豊かな食生活を享受しています。また、災害などの非常時にも、安定した食品供給が求められます。こうした日常の食を支えているのが、ここ50年ほどで高度に発達したコールドチェーンなのです。

一貫した温度管理で食品を守る

  • コールドチェーンの強みは、何といっても温度管理。

    食品の特性に合わせて、主に3つの温度帯(冷凍・冷蔵・定温)で運用され、生産地から消費地まで温度管理を徹底し、食品の劣化を防ぎます。

    食品の温度帯区分

    冷凍(-40度以下/-40〜-18度) 冷蔵(-18〜+10度) 定温(+5〜+18度)
    冷凍(-40度以下/-40〜-18度) 冷蔵(-18〜+10度) 定温(+5〜+18度)

    資料:「コールドチェーン」(森隆行ら著・晃洋書房/2013年)・日本冷蔵倉庫協会資料より作成

何がいいの?
食品を冷凍するメリット

  • 食品を冷凍するメリット

    3温度帯(冷凍・冷蔵・定温)のうち、特に冷凍の温度帯では以下のメリットがあり、食品ロス削減に大きく貢献しています。

    • 微生物が休眠状態となり腐敗・変質がほぼ完全に抑制される
    • 急速凍結では細胞が破壊されることが少なく、凍結前の品質を高度に再現できる
    • −18度以下で保管すれば凍結前の食品の品質を安定的に長期間保持できる

生産段階のロスを減らす

コールドチェーンがあれば、農産物など生鮮品の長期保存と
広域流通が可能になります。

  • 物流インフラ不足でロスが発生

    生産段階では、収穫前後の損傷や生産余剰などによるロスが発生します。
    特にアフリカやアジアなどの途上国では、ポストハーベスト・ロス(農作物において収穫後から流通までの間に生じるロス)が大きな課題。保管設備や輸送手段が整っておらず、貯蔵中や農家から市場までの輸送中に腐敗・劣化してしまうのです。

    東南アジアにコールドチェーンを

    日本ではどちらかといえば消費段階の食品ロスが課題ですが、地球規模で食品ロスを減らすためには、これらの国々でコールドチェーンを整備する必要があります。日本は、国交省を中心に「ASEANスマートコールドチェーン構想」を進めており、ニチレイも参画しています。

    運用には人材教育が不可欠

    ただし、コールドチェーンの整備には時間やコストがかかるという課題があります。また、徹底した温度管理・品質管理が必要なので、それを運用する人材の教育も不可欠です。

    <地域別、フードサプライチェーンの各段階で発生したロス・廃棄量の当初生産量に占める割合(穀物)>

    地域別、フードサプライチェーンの各段階で発生したロス・廃棄量の当初生産量に占める割合(穀物)グラフ
    地域別、フードサプライチェーンの各段階で発生したロス・廃棄量の当初生産量に占める割合(穀物)グラフ

流通段階のロスを減らす

コールドチェーンがあれば、保管・輸送中の腐敗や劣化を防ぐことができます。

  • 劣化・破損でロスが発生

    流通段階では保管・輸送時の劣化、外装の傷みなどによるロスが発生します。

    温度と品質管理がカギ

    コールドチェーンの中の物流機能を「低温物流」といい、冷蔵倉庫での「保管」、船・鉄道・トラックでの「輸配送」、積み替え時の「荷役」など複数の工程で温度管理と品質管理を徹底することで、食品(商品)の品質を損なわずに消費地まで届けられます。また、壊れにくい包装の開発も進められています。

    環境負荷低減に向けて

    一方で、電力消費、排ガス、CO2、交通渋滞の発生など、環境面の課題もあります。環境負荷低減に向け、共同輸配送による効率化、モーダルシフトなど、低温物流業界全体で全体最適を考えた取り組みを進めています。

消費段階のロスを減らす

コールドチェーンがあれば、必要なときに必要な量を必要な
場所に届けられます。

  • 売れ残り・食べ残しでロスが発生

    消費段階では在庫余剰、直接廃棄、食べ残しなどによるロスが発生します。

    物流で受給バランスを調整

    多くの食品には賞味期限や消費期限がありますが、コールドチェーンでは、需要と供給のバランスを見ながら出荷を調整できるので、店頭の売れ残りや期限切れによる廃棄を減らすことができます。
    注文から納品までの時間(リードタイム)を短縮して販売期間を長く確保したり、多頻度小口化に対応するなど、高度な物流サービスが、小売店や外食、その先にある家庭での食品ロスの削減につながります。

    家庭でのロスを減らすために

    私たちニチレイは、コールドチェーンの最終走者である生活者(消費者)の皆さまに対しても、冷力のプロとして役立つ情報をご提供し、家庭における食品ロスを減らすお手伝いをしたいと考えています。

04 ニチレイの取り組み

ニチレイグループは創業以来、”冷力”をコアにした事業を展開してきました。食品の「長期保存」や「品質保持」、「食材の再現性」といった冷力の特性を活かした各事業は、食品ロス削減にも貢献しています。
さらに、サプライチェーン全体にわたって、グループ各社がそれぞれの視点で食品ロス削減に取り組んでいます。その取り組みの一部をご紹介します。