AI選別技術を活用し「念のため廃棄」を減らす

2021年03月01日

ニチレイフーズ

背景

異物や規格外商品を見つける出荷前検査

「手に取っていただいた方に、安心しておいしく食べてもらいたい」そのために食品工場では、日々厳しい検査を行い、商品の品質と安全を守っています。原料由来の夾雑物(きょうざつぶつ)である骨や殻などの小さな破片が混ざっていないか、商品の形や焼き色は規格に合っているかを検査機器や人の目で検査して不良品を排除します。しかし、ミリ単位の異物や微妙な色の違いを見極めるのはベテラン検査員でも難しく、生産現場の人手不足も深刻です。

念のために除かれる、判断が難しい商品

ここで発生してしまうのが、念のために除かれる商品。実際は良品かもしれませんが、不良品との基準範囲境界に近い商品は判断が難しく、「万が一」を考慮して廃棄せざるを得ません。この「念のため廃棄」が、生産段階で発生する食品ロスとして大きな課題となっていました。

検査の様子

検査の様子

ニチレイの取り組み

食品ロス削減に役立つ技術は20年前から

こうした「念のため廃棄」を減らすため、ニチレイフーズは長年、検査装置の開発に取り組んできました。テーマは「見えないもの・見づらいものを見分ける」。その原点が、20年以上前に自社開発した、えびの残殻検査装置です。

えびの選別検査装置で特許を取得

えびピラフやえびグラタンなどの材料として使われるむきえびですが、当時、殻のむき残しを見つける検査はすべて人が行っていました。しかし、むき残しは目視では見つけづらく、大量の原料を一定時間にやろうとすると限界があります。さらに「見る・触る」検査は、立ち仕事で細かな作業を行う大変な仕事でした。

そこで技術者たちは、えびに特殊な光を当てて殻と身の反応の違いにより殻を自動で取り除く装置を開発しました。この装置は現在、機器メーカーが製造販売しており、多くの食品工場で利用されています。

1999年に特許取得した、殻のむき残しを検査排除する技術

えびの検査装置。この装置の評価は高く、 現在ニチレイフーズ以外の会社でも導入されている

新たな挑戦、AIで精度をアップ

この技術を最新テクノロジーで進化させたのが、AI(人工知能)による選別検査装置です。検査の精度を上げて誤認知を減らすとともに、判断に個人差の出る目視検査を減らすのがねらいです。

チキン原料を自動で素早く正確に選別

からあげなどの材料となるチキン原料は主に「硬骨」「羽」「血合い」の3つを除く必要があり、このうち硬骨は一般的にX線による選別技術が確立されていますが、羽と血合いは人の目と手に頼っていました。しかし、前述のえびの殻と同様、羽と血合いの選別は神経を使う重労働。疲労による判断ミスも避けられません。また、基準範囲境界に近い場合の判断には個人差が出てしまうため、確実に不良品を排除するために、基準限界に近い良品原料も念のために廃棄する場合がありました。

上のチキン原料表面の赤み部分が「血合い」

そこで、ニチレイフーズは2016年に自動選別検査装置の開発に着手。近畿大学と共同開発でAIを使った独自の選別技術を確立し、業界に先駆けて実用化に成功しました。
チキン原料を特殊なカメラで撮影し、画像の血合いや羽の部分を独自のアルゴリズム※で数値情報化してAIで判定するもので、人の目や手で時間をかけて判断していたものを自動で瞬時に判断、選別し、見つかった血合いや羽は作業者がピンポイントで除去して材料として利用します。
2019年に国内の工場に導入され、選別検査の精度向上とスピード化に効果をあげています。

※問題解決の手順や計算方法・やり方

AI自動選別技術は食品ロスの削減だけでなく、人手不足や労働環境の改善にも役立つ

チキン原料に特定波長の光を当てて羽の取り残しを浮かび上がらせる

生産ラインの食品ロス削減を目指して

工場の生産ラインにおける食品ロス削減に向けて、2019年には包装前段階の鶏肉加工品(からあげなど)に残存する可能性がある「硬骨」をAIで選別する技術を機器メーカーと共同で開発。工場導入に向けた挑戦を続けています。
ニチレイフーズは今後もさまざまなアプローチでAI技術を活用した装置開発をし、食品ロス削減をはじめとした社会課題の解決を実現します。