PROJECT STORY | ニチレイフーズ

「特から®」
開発プロジェクト

お弁当や、毎日の食卓に彩りを添える冷凍食品。その製造や物流に関する技術は日進月歩で向上し、手作りと比較しても遜色ない品質のものが店頭に並ぶようになった。このストーリーでは、消費者に広く親しまれ愛されているメニューの新商品開発に取り組み、おいしさの再定義から商品づくり、販売に至るまで関わった、ある男の情熱に触れてみた。

MEMBERこのプロジェクトに登場する社員

  • 松岡 顕人

    松岡 顕人

    2009年入社

    家庭用事業部家庭用商品グループ

掲載の仕事内容、所属は取材当時のものです。

01 No.1を、奪取奪回せよ。

外はさっくり、中は適度な食感。噛むごとに、口の中に広がる肉の味わい、じゅわっと広がる脂の旨み。断面からは、香ばしい湯気が上がる。鶏のから揚げ。おかずとしてご飯の供とするもよし、お酒のつまみとして楽しむもよし。カレーやラーメンと並んで、国民食と言って良いくらい、広く愛されているメニューである。食卓はもちろん、お弁当においても定番のひと品であるから、冷凍食品として商品化は既にされており、ニチレイフーズはもちろん競合他社も複数の銘柄をリリースしている。冷凍食品メーカーの中において、ニチレイは売上でNo.1の座を占めている。しかし、から揚げカテゴリーで単品ごとに売上を比較すると、ニチレイフーズの商品は2002年以降、他社のある商品の後塵を拝し続ける状態が続いていたのだった。国民食と言って良いメニューで、後れをとっている状態。ニチレイグループにおいて、また、冷凍食品の製造・販売に取り組むニチレイフーズ社員にとって、その状態は決して甘受できるものでは無かった。から揚げで、No.1を奪取したい。そんなニチレイフーズ社員にとって共通の想いが、2015年に発足した、から揚げ新商品開発プロジェクトとして形になる。2014年からチキン担当となった松岡は、このプロジェクトの一員となった。

02 “おいしさ”を、定義せよ。

プロジェクトの様子

プロジェクト発足前後のニチレイブランドの状況を見ると、2014年はおにぎりカテゴリーが売上で前年比110%以上、2015年・2016年が炒飯カテゴリーでそれぞれ前年比130%以上と、米飯カテゴリーが売上を力強く支えている状況であった。また、当時は2008年以降、第2次から揚げブームと呼ばれる状況が続いており、商品開発の成功はグループ全体へ大きな貢献となることが予想された。つまりは、ニチレイグループ全体からの期待が、このプロジェクトに寄せられる状態であった。
新商品開発に当たって、松岡はあるビジョンを抱えていた。現在の冷凍食品にない、本格的なものを作りたい。家庭の食卓に、堂々と並べられる品質のものを作りたい。それが、松岡の想いだった。
では、食卓に並ぶから揚げとは、その美味しさとは、いったいどんなものなのか。そこに考えが至ったところで、松岡は最初の壁にぶち当たる。たれやスパイスに頼るのではなく、から揚げ本来の品質で勝負しよう。ブームをけん引する有名店のから揚げは参考になるものの、松岡が目指しているのは家庭の食卓で楽しまれる味であり、専門・特殊なものとは異なるのだ。そして家庭のから揚げは、それこそ家庭の数だけ味がある。松岡は、“家庭で食べられるおいしい唐揚げの味を定義する”という、難しい課題に直面した。

03 “おいしさ”の黄金比を、発見せよ。

解決に向け松岡が選択したのは、「生活者アンケート」であった。今回の商品は、生活者・消費者の求めるものとギャップがあってはならない。消費者が、何をもって“おいしさ”とするのかを、知る必要があった。
結果として見えてきたのは、消費者は“ジューシーさ”“適度な食感”“味付け”の3点を重要視して“おいしさ”を判断している、とのことだった。ジューシーさは、噛んだ時に口の中に優しく広がるじゅわっとした旨みであり、適度な食感は、堅すぎず柔らかすぎない肉の食感であり、味付けは、どうやら醤油を中心とした“和”のテイストが広く受け入れられるだろうと考えられた。
また、もうひとつ大きな示唆がアンケートから得られた。現状、市場に出回っているパッケージに入っているから揚げの量だと、家族で食べるには物足りない、という声があったのだ。
プロジェクトは試作の段階に入り、研究開発チームと折衝しながらの試行錯誤がはじまったが、松岡は自分が長く曲がりくねった坂道を登るような厳しいテーマに取り組んでいることに、すぐに気づいた。
“ジューシーさ”“適度な食感”“味付け”、この3点はバランスが大事であり、どれかを強めればどれかが損なわれる。松岡、そして研究開発チームは、から揚げのおいしさの黄金比を求めるという、前人未到の道を進むことになった。
1年ほど時は流れ、松岡たちはようやく納得できる味の再現に成功。
試作品を手に、プロジェクトやその周辺メンバーが待つ会議室に足を運んだ。

04 経験則を、克服せよ。

プロジェクトの様子

「う~ん・・・これで、本当に売れるのかなあ。」
試食会に参加してくれた、先輩社員が思わずそんな一言を漏らす。表情は冴えない。
松岡の胸のうちに『なぜ?』という想いが駆け巡るが、首をかしげる先輩たちにその理由をたずね、どうするべきか意見を仰ぐうちに、彼らの危惧が松岡にも理解できた。
松岡たちは再び、まだ見ぬ黄金比を求め続ける作業に取り組んだ。
しかし、簡単に答えは見つからない。材料をあれこれ試したり、製造工程のバランスを変えたりしても、これまでの商品と変わらないレベルにしかならない。
行き詰まり感を抱えていた松岡及びプロジェクトに、あるひらめきが舞い降りた。
開発担当から、「これまでの商品ではやらなかった手法を試してみよう」という提案があったのだ。言われてみると、これまでの試作品は、これまでの製造方法(プロセス)のままつくられていた。過去の成功体験から、脱することができていなかったのだ。
それで手詰まりになるのであれば、これまでの経験を乗り越えてみよう。そんな機運は、プロジェクト全体に広がっていき、試作品として結実した。
再び、試食会にメンバーを招く。忘れられない、あの一言を漏らした先輩の顔もある。
並べられた皿、かぶりつく参加者たち。 あの先輩が、松岡に目を見開き語りかけた。
「これ・・・これだよ!」
松岡が2年かけて登り続けた、長く曲がりくねった坂道。
ようやく、松岡の目の前に、陽の光が見えた瞬間だった。

05 常識を覆し、市場を席捲せよ。

プロジェクトの様子

ひとつの坂を登りきった松岡だが、すぐに次の坂に向かわなければならなかった。
商品名やパッケージの企画。これまでにない、家庭の食卓に堂々と並べられる、王道のから揚げ。『特から®』、という名前は、特別・特撰・特上・特大など、『特』に様々な想いを込めて命名された。ちなみに、消費者の声を受けて、から揚げのサイズは冷凍食品の平均である28g、惣菜デリカの平均である29gを上回る、32g。これは、食卓に乗せた時の存在感と、弁当向けニーズの双方を満たす大きさを探り続けて、たどり着いたボリュームだ。
味付けは、王道の味である和風、キーテイストは醤油味。パッケージは、醤油の別名である紫にちなんで紫色。これは、暖色を基本とし、寒色のパッケージの商品は売れないとされてきた冷凍食品としては異例の選択である。
続いて、実際の製造を担う、タイの現地工場スタッフに対し、この商品を中心としたビジネスプランを説明することで、商品の重要性を理解してもらう必要があった。なぜなら新商品は、これまでにないプロセスで作らなければならないという、現地にとってはやや面倒なことに取り組まなければならないことを、受け入れてもらわねばならないからだ。
更には、全国各地の営業現場をまわり、小売店などへの販売を担当する社員へ説明会を行った。店舗現場、そして消費者に一番近いところにいる彼らの反応も、売れ行きを予想するうえでの材料となる。そしてその予想は、決して悪いものでは無かった。
2017年の春にリリースされた新商品「特から®」。
いくつかの常識を覆しながら誕生し、1年以上が経過。力を入れたプロモーションの効果もあり、売上は好調に推移。ニチレイフーズ市販用おかず唐揚げカテゴリー前年比160%増、市場全体でも前年比125%と全体を大きく押し上げる大ヒット商品となった。
そして、単品として、ついにNo.1の座を奪取。
しかし、松岡はまだここがゴールとは考えていない。ここまでできたのだから、もっといいものがつくれるはずだ。松岡は、また次の坂道を目指して、歩み続ける。