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ニチレイが企業として成長を続けていくために、欠かせないブレーンとなるのが財務サポートである。グル―プ企業の財務サポートを一手に担うニチレイで、大きな国際M&Aを成功に導いた人物・宮腰が立ち向かった壁とは。
「このフランス企業の企業価値を算出してみてくれ」
プロジェクトの発端は、上司から送られてきた1通のさりげないメールだった。ニチレイロジグループのひとつ、オランダの現地会社が絡むM&A案件。対象となるフランス企業の買収金額について、ニチレイの財務IR部に検討が打診された。その案件を担当することになったのが宮腰である。同部は、ニチレイグループにおける資金調達などの財務マネジメントを一元的に担っている。M&Aについては外部のフィナンシャルアドバイザーを起用する場合も多いが、今回は現地会社に直接持ち込まれた案件ということもあって宮腰たちのチーム自らで完遂することになった。
「学生時代は経済学部ですが、部活ばかりで経理財務の勉強はほとんどしなかった」と笑う宮腰は、経理部門で経験を積み、2008年4月、財務部門(資金調達)に移動。財務のプロフェッショナルとしてのキャリアを積み上げてきた。
「ニチレイは研修制度がしっかりしていて、私の専門知識はすべて入社してから学んだもの。今回の仕事も、コーポレートファイナンスの外部研修を受けたばかりのタイミングで、学んだ知識が試せると勇んで取り組みました」
しかし、そのチャレンジがこれまで経験したことがない巨額のM&Aプロジェクトになるとは想像もしていなかった。
この成長率は現実的なのか? 売上げの伸びは? 新たな設備投資の必要性は? 資金調達の方法は?
プロジェクトでは、事業会社であるニチレイロジグループ経営陣との密接な連携のもとに検討が進められた。また、ニチレイの経理担当スタッフや財務の先輩社員からも数多くのアドバイスを得た。財務経理というと、デスクに座りパソコンと向き合うばかりのイメージがあるかもしれないが、実際はとてもアクティブな仕事。宮腰は、ミーティングを積み重ねて多様な情報を収集し、あらゆる角度から分析しながら買収額の算出を進めていった。
M&Aにおける買収金額の算出は、相手側が示すデータなどをベースにその企業の将来性を評価することから始まる。
「算出にあたってはすでに実績のある標準的な計算式があります。しかし、それはあくまでも理論であって、現実とは違う。この理論と現実のギャップをいかに埋めるかが難しいのです」
評価が定まったら、次に「リスク」という視点から検討を加えて最終的な買収金額へと導いていく。
「このリスク係数の設定にも様々な駆け引きが必要。今回対象となったのはフランスの企業は、低温物流事業会社でマーケット的にも欧州は成熟しているので比較的安定しています。また、新興国などと較べればカントリーリスクも小さいのですが、それでも慎重に検討を重ねました」
そして自ら算出した最終的な金額を見て、宮腰は小さく息を呑んだ。並んだ数字は10桁に達していた。買収金額30億円を超えるM&A案件となったのである。
「おい、あのM&A案件、合意したぞ」
デスクに立ち寄った上司のひと言を聞いて、宮腰はほっと肩の力を抜いた。多くの仲間たちとチームで取り組んでいたとはいえ、買収金額30億円超の国際プロジェクト。ニチレイロジグループへの提案での感触もよく、プロジェクトは順調に進んでいるようだったが、宮腰はずっと重低音のようなプレッシャーを感じていた。その重圧から解き放たれたいま、たとえようのない達成感がじわじわと湧き上がってきた。
しかし、これで財務エキスパートとしてタスクが完了したわけではなかった。次には買収資金の調達も検討しなければならない。宮腰は、実際の買収を行うオランダ現地会社の財務担当者と連絡を取り合い、現有資金や金融機関からの借入限度額などを確認し、為替レートなども懸案しながらもっとも効率のよい資金調達を提案していった。こうして本契約が締結したのは、宮腰がプロジェクトに加わってから約1年後のことだ。
「あの時は30億円という金額の大きさに実感がなくて無我夢中。しかし、いま振り返ると、大きなプロジェクトを経験できたなと思いますね。最近では、グループ各社の担当者から欧州に限らず様々な国でのM&A案件や資金調達などの相談も増えてきました」
財務プロフェッショナルとしてのステップをまたひとつ駆け上がった宮腰は、ニチレイグループの未来に向けて、これからもチャレンジングなプロジェクトを経験していくのだろう。