氷の実験室 色つき水の凍り方
一気に凍る「過冷却」のひみつ(1)

もともとニチレイは氷屋さんでした。
氷が大好きなニチレイはこの「氷の実験室」で、みなさんと一緒に「氷」の秘密をじっと見つめ考えていきたいと思います。
雪と氷が大好きなレイちゃんとロジロジくん、氷博士の石井先生と一緒に、氷の不思議に触れてみましょう。

ロジロジくん

凍らせたジュースを溶かしながら飲んだら、最初がすごく甘くて、最後の方は薄くなっちゃったよ。

レイちゃん

どうして味がかたよっちゃうんだろ?

やってみよう!

実験6-1

色つき水の凍り方を調べよう

用意するもの

  • 透明なペットボトル
  • 食紅、インクなど
レイちゃんとロジロジくん

手順

  • 1. 水に薄く色がつく程度に食紅やインクを入れて混ぜます。
  • 2. ペットボトルの8分目くらいの高さまで、1を入れます。
  • 3. 冷凍庫の中に2のペットボトルを入れて凍らせます。
  • 4. 取り出して、どんなふうに凍ったか見てみましょう。
答え

色のついた部分が真ん中に集まり、周りは透明になる

レイちゃん

上や下の方にも赤い部分があるね。どうしてこんなふうに凍るんだろう?

ロジロジくん

教えて!氷博士!

氷博士

教えて!氷博士

どうしてジュースは均一に凍らないの?
水は凍るときに、ほかの物質を押し出そうとする性質があります

水が凍るときには、水分子が規則的に並んで氷の結晶になります。このとき、水は水分子同士で結びつきたいので、水の中にほかの物質が溶けていると、それを不純物として排除しながら結晶をつくっていこうとする(※)のです。例えば、泥水の水たまりでも表面に張った氷は透明できれいだったり、海水の上に浮かぶ氷をなめてもほとんど塩味がしないのは、このためです。
(※)水の結晶(氷)は、特殊な結合である「水素結合」(食用油を凍らせてみよう 氷の重さを考える(3)の「教えて!氷博士」参照)によって分子同士が結びついているので、この結晶構造の中に不純物が入るのは、他の物質の結晶と比べても非常に困難なのです。現在、水の結晶(氷)の中に入り込める物質として知られているのは、フッ素や塩素などごく一部のものだけです。

冷凍庫に入れたペットボトルの中は、冷気の当たる外側から内側へと食紅やインクなどの不純物を押し出しながら凍っていったので、色のついた部分が真ん中に集められてしまったのですね。さらに、最後に真ん中の部分が凍るときの体積増加(氷は水よりどれくらい軽い?氷の重さを考える(2)の実験2「水と氷の体積変化と重さ比べ」参照)で、比較的薄い上側の氷の層が破れて、色つきの部分が押し出され、この状態になったのでしょう。
これがとけるときには、逆に、不純物の多い部分が低い温度で先にとけだします。そのため、凍らせたジュースなどを飲むときには、甘い成分の多い部分が先にとけだして、純粋な氷の部分が残るので、だんだん薄くなってしまうのですね。
水が不純物を外に押し出しながら凍る現象は、凍る速度がゆっくりのほうがよくわかります。急激に冷やして全体が一気に凍ると、不純物を押し出すヒマがなくて、氷の結晶と結晶の間に不純物が残ってしまうためです。今回の実験で、「あまりきれいに真ん中に色が集まらなかった」という場合は、ペットボトルを冷凍庫に入れるときにタオルやエア・クッション(気泡シート)でくるんで、ゆっくり凍らせるようにしてみてください。反対に、凍らせたジュースのペットボトルを、最初から最後までなるべく同じ味で飲みたいときには、できるだけ一気に速く凍らせる方がいいということですね。

氷の性質を利用した「凍結濃縮」の技術

水が溶けているものを排除しながら凍る、という性質を利用した技術が「凍結濃縮」です。例えば、コーヒーなどの液体を保存したり運んだりするときに、そのままだと量が多くて大変です。そのときに、凍らせて純粋な水(氷)の部分を取り除いていくことで、コーヒーの成分を濃縮できるのです。液体を濃縮する方法には、ほかに熱乾燥などがありますが、高温になると色や香りなどの成分が変化してしまうことがあります。「凍結濃縮」の場合は低温なので、成分に影響をあまり与えずに濃縮ができ、色や香り、栄養価が重要な食品や、医療品などに利用されています。

この「氷の実験室」は、自由研究など幅広く活用していただきたいと思って作りました。
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2022年1月24日