安全・安心な食の知識 ノロウイルスの特徴
STOP! 食中毒講座

毎日の家庭の食事の中にも、実は、食中毒のリスクが潜んでいます。
食品工場の衛生管理も含めた品質管理を経験してきたニチレイフーズ 国内品質管理グループの田中修一郎が、
その知識と経験を生かして、家庭での食中毒予防ポイントをアドバイスします。

お母さん

子どもの幼稚園のお友だちが、昨日の帰りに急に吐いちゃって。病院に連れていったら、ノロウイルスの食中毒だったんですって!
寒い時期でも食中毒ってあるのね。うちも気をつけなくちゃいけないかしら?

田中先生

そうですね。実はノロウイルスによる食中毒は、11月~3月の冬期に非常に多くて、年間の患者数では食中毒全体の5割を超えているんですよ。
まずは、ノロウイルスの特徴から説明しましょう

1 少ない菌数でも発症

ノロウイルスは、他の大部分の食中毒菌と比べて、非常に少ない菌数でも発症します。他の食中毒菌は食品中で増殖し、それを食べたことによって発症することがほとんどなので、増やさないように食品の温度管理をしっかりすることで大部分は防げます。 しかしノロウイルスは食品などの中では増えず、人の腸内に入ったときに一気に増えます。そのため、食べ物だけでなく、服やタオル、ドアノブなどに付着していたごく少数の菌が口に入っただけでも発症することがあります。

2 乾燥に強い

ほとんどの食中毒菌は、乾燥させれば死滅もしくは失活します。しかし、ノロウイルスは乾燥が大好き。逆に、湿度の高い環境ではおとなしくなります(死滅はしません)。 そのため、ノロウイルス患者の嘔吐(おうと)物などが時間 が経って乾燥したときにも、要注意。乾燥した嘔吐物が目に見えないチリ状態になって空気中に浮遊し、その中にいるノロウイルスを吸い込むことによって発症することがあります。嘔吐物などを適切に処理することが、感染を広げないために重要です。

3 アルコールでは死滅させる事ができない

ほとんどの食中毒菌は、アルコール殺菌で死滅します。食中毒予防に、手洗いの後にアルコール噴霧を習慣にしているご家庭もあるでしょう。しかし、ノロウイルスにはアルコールは効きません!「アルコール殺菌したから」と安心するのは、冬場は逆に危険。ノロウイルスに殺菌効果があるのは、次亜塩素酸ナトリウム(市販の塩素系漂白剤などに含まれている成分)です。しかし、次亜塩素酸ナトリウムはアルコールのように溶液を噴霧するのには向きません。ノロウイルスの予防については、殺菌よりも手洗いをしっかりして「洗い流す」ことを重視しましょう。

お母さん

ノロウイルスってやっかいねー。防ぐためには、どうしたらいいの?

田中先生

食品工場では、とにかく工場内に持ち込ませないための対策を徹底しています。家庭での予防の方法は、次回紹介します。

★ STOP! 食中毒クイズ★

Q

ノロウイルス予防はABどちらが正解?

  • A
    石けんで爪の間や手首までしっかり洗う
  • B
    石けんで軽く手を洗った上で、アルコールを噴霧する
答えを見る

正解は A

ノロウイルスは、アルコールでは死滅させることができません。アルコール噴射することによって、手に付いた他の金が死んでノロウイルスだけが元気に生き残る、という危険もあって、ノロウイルスの予防には逆効果。他の食中毒の危険が少ない冬の間は、アルコール噴射に頼らずに、その分しっかり手を洗うように心がけましょう。

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2022年1月24日