安全・安心な食の知識 ノロウイルス感染拡大を防ぐポイント
STOP! 食中毒講座
毎日の家庭の食事の中にも、実は、食中毒のリスクが潜んでいます。
食品工場の衛生管理も含めた品質管理を経験してきたニチレイフーズ 国内品質管理グループの田中修一郎が、
その知識と経験を生かして、家庭での食中毒予防ポイントをアドバイスします。
ノロウイルスに感染すると、約1~2日(24~48時間)で嘔吐や下痢、腹痛や微熱などの症状が出ます。軽い風邪のような症状のこともあります。ノロウイルスの流行期に嘔吐や下痢の症状があれば感染を疑い、家族などに感染を広げないために、以下のような対処を行いましょう。
嘔吐(おうと)物などの
処理ポイント
1.慌てない!
床などに嘔吐した場合、つい慌てて拭き取ろうとしてしまいがち。
しかし、むやみに拭くと逆に菌を広げてしまったり、しぶきを吸い込んで感染してしまったりという危険があります。嘔吐物が乾燥するまで放っておいてはいけませんが、1時間程度なら問題ありませんので、まずは患者が吐いたものを喉に詰まらせていないかなどを確認(特にお子様や高齢者の場合は注意)し、その後、以下の準備をしっかり整えてから対処しましょう。
必要な準備
- 使い捨てのマスク・手袋、汚れてもいい服やエプロン(後で消毒)に着替える
※適当なエプロンなどがない場合は、45リットルのゴミ袋に首と腕が出る穴を開けて使い捨てガウンにするという手も(被るときには窒息に注意) - ペーパータオル、 消毒用の次亜塩素酸ナトリウム水溶液①②を準備
2.次亜塩素酸でしっかり殺菌
嘔吐物などの全体を覆うように、次亜塩素酸ナトリウム水溶液①に浸したペーパータオルを被せます。ここでも慌てず、しばらく(10分程度)置きます。これによって、嘔吐物中のノロウイルスがかなり殺菌されます。次亜塩素酸ナトリウム水溶液には嘔吐物などの消臭効果もあります。
その後、しぶきを立てないように静かに拭き取ります。
拭き取った嘔吐物、マスクや手袋などは、ビニール袋に入れて密閉して捨てます。その際に、次亜塩素酸ナトリウム水溶液①をビニール袋に注ぎ込んで殺菌するといいでしょう。
床や服、食器などの消毒ポイント
1.可能性あるものは全部消毒
嘔吐物の飛沫は、かなり遠くまで飛び散っていることがあります。周囲の床や壁、ドアノブなどは、次亜塩素酸ナトリウム水溶液②で拭いて消毒します(※1)。
また、嘔吐物や排泄物の他、ノロウイルス患者の使った食器や衣服、タオルなどにもノロウイルスが付いている可能性があります。それらも、次亜塩素酸ナトリウム水溶液②に10分程度浸して消毒します(※2)。なお、食器や衣服、タオルなどは、ノロウイルス患者の使ったものは別にして、洗浄・消毒してください。
- ※1次亜塩素酸ナトリウムには金属腐食性があります。ドアノブなど金属の部分を次亜塩素酸ナトリウム水溶液で消毒したときには、十分に薬剤を拭き取ってください。
- ※2衣類などは、次亜塩素酸ナトリウムによって変色することがあります。
2.高温殺菌も有効
ノロウイルスは高温での殺菌も有効です。85℃で1分以上の熱水での洗濯や、食器洗浄機での高温乾燥なども併用しましょう
次亜塩素酸ナトリウム水溶液のつくり方
殺菌消毒用の次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、市販の台所用や洗濯用の塩素系漂白剤(※3)を水で薄めてつくることができます。
※3
- 「塩素系漂白剤」という表示のあるものを使用してください(「酸素系」は不可)。
- 現在市販されている台所用の塩素系漂白剤(泡で出るタイプのものは除く)は、次亜塩素酸ナトリウムの製造時濃度6%のものが多いようです。しかし製品ごとに違いがありますので、詳しくはメーカーなどにご確認ください。また、封を開けて時間の経ったものは、濃度が薄くなっていることがあります。
次亜塩素酸ナトリウム濃度6%の 塩素系漂白剤を使用する場合
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- 嘔吐物などの処理用
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(次亜塩素酸ナトリウム水溶液①/1000ppm)
50ml(キャップ約2杯分)を水3リットルで薄める
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- 床、食器、衣服などの消毒用
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(次亜塩素酸ナトリウム水溶液②/200ppm)
10ml(キャップ1/2杯弱)を水3リットルで薄める
注意!!
- 塩素系漂白剤は、酸性の洗剤などと絶対に混ぜないでください(有毒ガスが発生します)。
- ペットボトルなどに消毒溶液をつくる場合は、お子様などが誤って飲まないように注意してください。
- 嘔吐物などに塩素系漂白剤の原液を直接かけないでください(有毒ガスが発生することがあります)。
田中修一郎
ニチレイフーズ
国内品質管理グループ
グループリーダー
品質保証担当として、日々安全安心な商品作りに努めています。
★ STOP! 食中毒クイズ★
この冬、一家でノロウイルス食中毒にかかりました。
もう今シーズンは大丈夫?
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- A
- 一度かかると免疫ができるので、同シーズンに2度は感染しない
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- B
- 同シーズン中でも複数回感染することがある
- 答えを見る
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正解は B
ノロウイルスには種類が多く、人間が感染することが確認されているものだけでも35種類以上います。新型が出てくることも。免疫はウイルスの種類ごとに違うので、一度かかって免疫ができても、違う種類のウイルスが入ってくれば感染してしまいます。油断は禁物です。
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2022年1月24日