安全・安心な食の知識 ハンバーグづくり【下ごしらえ】
STOP! 食中毒講座

毎日の家庭の食事の中にも、実は、食中毒のリスクが潜んでいます。
食品工場の衛生管理も含めた品質管理を経験してきたニチレイフーズ の田中修一郎が、
その知識と経験を生かして、家庭での食中毒予防ポイントをアドバイスします。

お母さん

食中毒が恐いし、まずは手をしっかり洗わないとね

田中先生

田中先生の解説

殺菌剤入りの石けんを使って爪の間などまでしっかり洗えば、かなりの菌を除去することができます。
しかし、人間の手には細かいしわなどがたくさんありますから、その奥に入り込んだ菌まで完全にゼロにすることはできません。

食品工場ではどうしているの?

工場に入る前には、殺菌剤入りの石けんで手首までしっかり洗い、爪の間は専用のブラシで洗ったうえで、アルコール消毒しています。
また、工場内ではビニール製の手袋をはめて作業を行います。

食品工場の手洗い方法

手順1一旦、軽く洗う

一旦、軽く洗う事により、石けんの効果を発揮する事が出来ます。

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手順2石けんをつける

泡立つ量を目安にします。

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手順3手指をキレイに洗う

Check
Point!

各手順は5回ずつ繰り返す

1.手の平と手の平を洗う

2.手の平で手の甲を洗う(交互)

3.指の間、親指を洗う(交互に)

ここも
大切

親指洗い
(左右5回ずつ)

4.指の間を洗う

5.両手首を洗う

6.指先、爪の間を爪ブラシで洗う(交互)

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手順4流水ですすぐ

石けんをきちんと洗い流す。(20秒程度)
※この時に使用した爪ブラシは水洗いし、軽く振って元の場所に戻す。

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手順5水気を良く乾かす

水気が無くなるまで良く乾かしてください。(10秒程度)
※ジェットタオルの内壁に手がつかないようにしてください。

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手順6アルコール噴射

アルコール噴霧機に手をかざします。アルコールをよくすりこんで下さい。
※手が濡れていると、アルコール効果がなくなります。

家庭では?

家庭での手洗いの注意事項 殺菌力の強い洗剤などで洗いすぎると…手が荒れてしまい、傷口に黄色ブドウ球菌などの食中毒の原因菌が住み着いてしまうこともあります。

手をしっかり洗うことは大切です。しかし、あまり神経質になりすぎて殺菌力の強い洗剤などで洗いすぎると、皮膚を守る常在菌まで殺してしまって、手荒れにつながることも。手袋をはめて作業するというのも、家庭での調理には向かないでしょう。

また、家庭のキッチンは、工場のように衛生管理に気を配った閉鎖空間ではありません。ほかにも菌が入り込む可能性はいろいろとあるので、手だけを過度に注意しても食中毒は防げません。
適度に手洗いをした上で、「菌が残っている可能性はある」ということを念頭に、温度管理や加熱を適切に行うことで食中毒リスクを減らしましょう。

お母さん

まずは下ごしらえね。えーっと、何からやろうかしら

田中先生

田中先生の解説

料理の下ごしらえは、基本的に「肉・魚はいちばん最後に」と覚えておいてください。理由は2つあります。

1つは、 肉・魚はできるだけ低温に 保っておきたいからです。

肉・魚には、サルモネラやカンピロバクター、腸炎ビブリオなどの食中毒の原因菌がついている可能性が高いのです。食中毒が起きるのは、それらの原因菌が増殖してしまったとき。増やさないためには、温度を低く保つことが重要です。
細菌の多くは、10℃以下では活動が鈍ってあまり増えなくなるのです。
そのため、肉・魚はギリギリまで冷蔵庫に入れておいて最後に下ごしらえをすることで、温度が上がって原因菌が増える隙を与えず、食中毒予防に有効なのです。

2つめは、 二次感染の予防 です。

肉・魚を切ったまな板や包丁、手などには、肉・魚についていた食中毒の原因菌が移っている可能性があります。そのまな板や手などで、例えばサラダの野菜を扱うと原因菌が移り、さらにそれが夕食までの間に室温に置かれていると、原因菌がどんどん増えてしまって食中毒を起こす原因になります。
そのため、肉・魚を扱った手や器具は、必ずすぐに洗うことが大切です。
しかし、洗っても残ってしまう可能性も。そこで、原因菌がついている可能性の高い肉・魚はいちばん最後に扱うことで、他の野菜などへの二次感染を防げるのです。

食品工場ではどうしているの?

野菜、肉などの原材料は、それぞれ専用の器具でカットなどの下ごしらえをします。ハンバーグのラインでは、肉は低温に保つために半解凍状態でミンチにし、すぐに冷蔵庫に戻します。すべての材料の下準備を済ませてから一気に混ぜて、成型、焼きの工程に入るのですが、常に温度を管理して、少しでも時間が空くときには冷蔵庫に戻すように徹底しています。

家庭では?

まな板は、肉・魚用と野菜用を分けるようにすると安心です。
また、肉・魚を冷蔵庫から出してちょっと時間が経ってしまったかな、と感じたら、指で触ってみましょう。「冷たい」と感じるようなら、まだ大丈夫。生ぬるくなっていたら(つまり、食材の温度が体温に近くなっている)、すぐに冷凍庫へ。温度を急速に下げるためには、冷凍庫が最適です。

包丁とまな板 肉や魚を扱った包丁やまな板には、肉や魚についていた食中毒の原因菌が移っている可能性があります。お肉や魚は専用の包丁やまな板を使うのが良いです。野菜や生で食べる食品は専用の包丁やまな板を使うことで、食中毒の原因菌が移るのを予防します。
お母さん

タマネギのみじん切りOK、 パン粉と牛乳、卵の準備もOK! さぁ、じゃあここにひき肉を入れて、塩こしょうして混ぜて、と・・・

ピンポーン(玄関のチャイム)

お母さん

あら、誰かしら? このハンバーグダネどうしよう? ちょっとの間だからこのままでいいか・・・

田中先生

田中先生のアドバイス

だれかが訪ねてきたり、電話がかかってきたときには、調理中の肉・魚は必ず冷蔵庫に入れましょう!ついうっかり話し込んでいるうちに、食中毒の原因菌はどんどん増えますよ。特にハンバーグダネなどのひき肉料理は、原因菌が増えやすいので、注意が必要です。おすすめは冷凍庫に入れること。「でも、冷凍庫は冷凍食品などでいっぱい」という場合は、冷凍庫の中味をとりあえず冷蔵庫に移して、空いたスペースに調理中の食材を入れるといいですよ。冷凍した食品は、数十分程度なら冷蔵庫でも大丈夫です。

冷蔵庫の利用 下処理した材料は短時間であれば冷凍庫に保管するのが良いです。表面が凍ってしまってもレンジでチンせず、常温で解凍しましょう。レンジを使うと部分的に温度が高くなりすぎ、食中毒の原因菌などが増えてしまいます。
お母さん

食中毒の原因菌って、室温だとすぐに増えちゃうのね。
でも、ハンバーグはどうせ焼くんだから、ちょっとくらい
原因菌が増えても、加熱したら殺せるから大丈夫なんじゃないの?

田中先生

田中先生のアドバイス

実は、食中毒には、大きく分けて2タイプあるのです。
1つは、 「感染型」といって、生きた原因菌が体に入ってくることで、食中毒を発症するタイプ。 このタイプは、加熱することで菌を殺し、食中毒を防ぎます。
もう1つは、 「毒素型」といって、原因菌が増殖するときにつくる毒素が原因で発症するタイプ です。こちらは、つくる毒素が熱に強いことが多く、加熱して原因菌自体は死んでも、毒素は残って食中毒の原因になるのです。
「毒素型」には、黄色ブドウ球菌やセレウス菌、ボツリヌス菌など毒性の強い原因菌があるので、要注意です。
この2つのタイプの原因菌がどこにどのようについているかは、目で見てもまったくわかりません。
ですから、「ついているかもしれない」という前提で、とにかく増やさないこと、つまり、食材の温度を低く保つことが重要なのです。

食中毒タイプ 感染型 生きた原因菌が体に入ってきて、それが体の中で増えてくると食中毒を発症するタイプは『感染型』といいます。サルモネラ菌や腸炎ビブリオ菌などが該当し、食品を食べる前に加熱することで、これらの原因菌は死滅させることが出来ます。 毒素型 食品中で原因菌が増殖する時に作る毒素を食べてしまうことによって食中毒を発症するタイプは『毒素型』といいます。黄色ブドウ菌やセレウス菌やボツリヌス菌などが該当し、食品を食べる前に加熱しても、これらの原因菌は死滅させることが出来ますが、毒素を無毒化することは出来ません。原因菌を増やさないように、低温管理するしかありません。

★ STOP! 食中毒クイズ★

Q1

石けんでしっかり手を洗えば、菌はぜんぶ退治できる?

  • A
    殺菌剤入りの石けんでていねいに洗えば、菌はゼロになる
  • B
    数は減らせるけれど、全滅はできない
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正解は B

Q2

ハンバーグをつくるときの手順は、どっちが先?

  • A
    野菜をみじん切りにする
  • B
    ひき肉をこねる
答えを見る

正解は A

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2022年1月24日