ニチレイから、いま伝えたい食にまつわる
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<第10回> 気化熱の「冷やす力」を知ろう

氷の実験室

ニチレイのルーツをさかのぼると、明治時代に設立されたふたつの製氷会社にたどりつきます。この二社はその後合併し、全国のたくさんの製氷会社を吸収して段々大きくなっていきました。もともとニチレイは氷屋さんだったということになります。今もグループの中には 株式会社ニチレイアイス という会社があって、大手の製氷メーカーです。

氷が大好きなニチレイはこの「氷の実験室」で、みなさんと一緒に「氷」の秘密をじっと見つめ考えていきたいと思います。雪と氷が大好きなレイちゃんとロジロジくん、氷博士の石井先生と一緒に、氷の不思議に触れてみましょう。

石井寛崇
(いしい・ひろたか)

ニチレイ 技術戦略企画部基盤研究グループ
冷凍食品のおいしさにも深く関わる氷について、日々研究を重ねている。

レイちゃんとロジロジくん
ニチレイロジグループのキャラクター

この「氷の実験室」は、自由研究など幅広く活用していただきたいと思って作りました。非営利目的での複製・転載などについてご希望がある場合は、株式会社ニチレイ グループコミュニケーション部 広報グループ( irinfo@nichirei.co.jp )までご連絡ください。

目次

(1)氷の「重さ」を考える
実験1 氷は水に沈む?浮かぶ?
実験2 水と氷の体積変化と重さ比べ
実験2-1 食用油を凍らせてみよう
実験2-2 水と氷と油の重さ比べ
(2)氷の温度を知ろう
実験3 氷の温度を測ってみよう
(3)氷と温度変化
実験4 0℃の氷と100℃のお湯を混ぜると何℃になる?
(4)いろいろな液体を凍らせてみよう
実験5-1 濃さの違うシロップ水の凍り方比べ
実験5-2 食塩水と砂糖水の凍り方比べ
(5)凍り方の不思議
実験6-1 色つき水の凍り方を調べよう
実験6-2 水が凍る瞬間を見てみよう
(6)とけ方で氷を見分けよう
実験7 どの氷が早くとける?
(7)電子レンジで氷をとかすと…
実験8-1 氷を電子レンジにかけるとどうなる?
実験8-2 氷と水を同時に電子レンジにかけるとどうなる?
(8)熱の運ばれ方と氷の溶け方の関係
実験9-1 扇風機の前に置いた氷のとけ方を見てみよう
実験9-2 風が強いと氷は速くとける?
(9)「気化熱」を体感しよう!
実験10-1 濡らしたタオルを振り回すと冷える?
実験10-2 お湯を霧状にまくと冷える?
(10)「気化熱」のパワーを計ってみよう!
実験11-1 水の気化熱で温度はどれくらい下がる?
実験11-2 どっちが冷える?水vsアルコール
(11)気化熱パワーを利用して「エコ冷蔵庫」をつくろう
実験12-1 素焼き植木鉢で「エコ冷蔵庫」をつくろう
実験12-2 「エコ冷蔵庫」をパワーアップさせよう

実験 気化熱パワーを利用して「エコ冷蔵庫」をつくろう 気化熱を上手に利用すると、電気を使わなくても、暑いときに中の物を冷やしておける「冷蔵庫」がつくれます。暑くて乾燥している国や地域では、実用化しているところもあります。 おうちにある素焼きの植木鉢を使って、実験してみましょう。

実験12-1 素焼き植木鉢で「エコ冷蔵庫」をつくろう

用意するもの

素焼き植木鉢2コ(同じサイズのもの)

フタ用の布(麻布やタオルなど)、ひも

温度計2本

手順
  • 1.素焼きの植木鉢を、2つ用意します。1つは水で濡らし(a)、もう1つは乾いたまま(b)にします。
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  • 水をかけて全体をよく濡らします(大きめのバケツなどに浸けてもOK)。
  • 2.(a)と(b)両方に手を入れてみましょう。濡らした植木鉢の中と乾いた植木鉢の中では、感じる温度は違うでしょうか?
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  • 濡らすと、感じる温度は違う?
  • 3.それぞれの植木鉢の中の温度を測るために、温度計を入れます。布でフタをして、風通しのいい日陰に置きます。
    ※暑い日にはコンクリートが熱をため込みやすいので、熱くなっているコンクリートの上には直に置かずに、日陰の棚などに置くのがおすすめです。
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  • 4.30分後くらいに、植木鉢の中の温度計を確かめてみましょう。それぞれの植木鉢の中の温度はどうなっているでしょう?
予想

実験12-1の結果を予想してみましょう。

  • A.(a)の植木鉢の中のほうが、(b)の植木鉢よりも温度が低くなっている
  • B.(b)の植木鉢の中のほうが、(a)の植木鉢よりも温度が低くなっている
  • C.どちらも温度は変わらない

答え A.(a)の植木鉢の中のほうが、(b)の植木鉢よりも温度が低くなっている。 濡らした植木鉢の中に手を入れると、ヒンヤリ感じたと思います。素焼きの植木鉢に含まれた水が蒸発していって、その気化熱パワーで(a)の植木鉢の中は冷えるのです。

湿度が低いほうが、冷える効果は大きくなるみたい。

でも、気温と湿度が同じくらいの日でも下がり方が違うときがあるね。

それはおそらく、風の影響だと思います。

風があるほうが、水が蒸発しやすくなるのよね。

その通りです。

じゃあ、濡らした植木鉢を一生懸命あおいで風を送ったら、冷やす効果はパワーアップするかな?

なるほど、そうですね。実験してみましょうか。

あおぐのは大変なので、扇風機登場!

 
風を当てるとどうなる?
扇風機の風力を「強」にして、濡らした植木鉢に5分間風を当てて、風を当てなかったものと温度を比べてみました。
<実験結果>
  • 気温28.5℃ 湿度48%
  • ・風なし 24℃
  • ・風あり 19℃

すごい! 風を送ったら5℃も下がったよ!!

パワーアップしましたね。外の温度と比べると10℃近く冷えています。風の強さや当て方を変えて、もっと冷えるようにできないか探ってみたいですね。

博士が実験で使ったのはけっこう大きい植木鉢だけど、小さい植木鉢だと冷やす効果も小さくなっちゃうのかな?

では、これもやってみましょう!

 
小さいとどうなる?
<実験結果>
  • 気温29℃ 湿度64%
  • ・大 26℃
  • ・小 26.5℃
  • 気温30℃ 湿度61%
  • ・大 25℃
  • ・小 26℃
  • 気温31.5℃ 湿度55%
  • ・大 27.5℃
  • ・小 27℃

ほとんど変わらないけど、大きい方が冷えているときも小さい方が冷えているときもあるね。

うーん、これも風など他の条件の影響でしょうか。もう少し細かく条件を変えて実験を重ねると、何かわかるかもしれません。今後の課題にしておきましょう。皆さんも、おうちにいろいろなサイズの植木鉢がある場合はぜひ研究してみてください。

実験12-2 「エコ冷蔵庫」をパワーアップさせよう

用意するもの

素焼きの植木鉢 同じサイズのもの2コ、一回り大きいもの1コ

温度計2本

手順
まずは、パワーアップ版の「エコ冷蔵庫」をつくります。
  • 1.サイズが一回り違う素焼きの植木鉢を2個用意します。
  • 2.両方の植木鉢の穴を、防水テープなどでふさぎます。
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  • 3.大きい方の植木鉢の底に1~2cmの厚さに砂を入れます。
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  • 4.大きい植木鉢の中に、小さい植木鉢を入れます。
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  • 5.2つの植木鉢の間に砂を入れます。
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  • 6.間に入れた砂に水を注いで濡らします。
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  • これで、パワーアップ「エコ冷蔵庫」の準備は完了です。

実験12-1で使った「濡らした植木鉢」(一重)と、パワーアップ「エコ冷蔵庫」(二重+砂)の冷やす力を比べてみましょう。

  • 1.濡らした植木鉢(一重)と、パワーアップ「エコ冷蔵庫」(二重+砂)の中に、それぞれ温度計を入れます。布でフタをして、風通しのいい日陰に置きます。
    ※暑い日にはコンクリートが熱をため込みやすいので、熱くなっているコンクリートの上には直に置かずに、日陰の棚などに置くのがおすすめです。
  • 2.それぞれの中の温度計を確かめてみましょう。温度はどうなるでしょう?

<実験結果>セットして30分後から、1時間おきに温度を測った結果、以下のようになりました。

最初は、一重植木鉢の方が、パワーアップ版より少し温度が低くなってるよ。

そうですね。この実験も3回ほどやってみたのですが、毎回、最初の30分~1時間くらいまでは一重の方が少しだけ温度が低くなっていました。

パワーアップ版の方が蒸発する水はたくさんあるのに、どうしてなんだろう?

考えられる可能性としては、一重植木鉢は全体をしっかり濡らしたのですが、パワーアップ版は主に間の砂に水を注ぎました。それで、一重植木鉢の方が濡れた部分の表面積が大きいため、最初に多くの水が蒸発して、速く冷えるのかと思います。さらに、パワーアップ版は砂に常温の水が大量に含まれているので、まずはその水の温度を下げることに気化熱パワーが使われたということも考えられます。

2時間くらい経つと、一重の方は温度が上がっていってるね。

そうですね。植木鉢に含まれていた水が蒸発して少なくなると、気化熱の効果が小さくなるためと思います。重ねて間に砂を入れたパワーアップ版のほうが、水をたくさん含めるので、効果が長く続くのですね。
この「二重植木鉢+砂」の気化熱を利用したエコ冷蔵庫は、アフリカのナイジェリアで考案され、「ジーアポット」と呼ばれています。アフリカなどの暑くて乾燥している土地(乾季の湿度は10~20%程度)では、かなり冷やす効果が高くなり、電気の利用できない場所でも傷みやすい野菜などを長く保存できるそうです。

非営利目的での複製・転載などについてご希望がある場合は、株式会社ニチレイ グループコミュニケーション部 広報グループ
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2019.10.30日 更新

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