タイチキン工場の「ゴミ」ゼロシステム

2021年03月01日

ニチレイフーズ

背景

日本人に人気のもも肉は、鶏一羽の2割弱

唐揚げやチキンソテーなど、日々の食卓で大活躍の鶏肉。中でも、特に日本人に好まれているのが、もも肉です。スーパーなどの精肉売り場での売れ行きは、もも肉とむね肉がおよそ8:2、地域によっては9:1近くなる場合もあります。しかし、鶏一羽から取れるもも肉の量は、全重量の2割弱。大切に育てられた鶏をムダにしないためには、鶏肉の販売者などが販路や加工を工夫して、一羽すべての部位をバランス良く売り切ることが必要です。

鶏1羽の部位ごとの割合(全重量に対する比率)

ニチレイの取り組み

タイに地元養鶏業者との合弁会社を設立

近年、鶏肉の需要は中国の国内消費増などを受けて増加し、世界的に買い付け価格が上昇傾向にあります。ニチレイフーズは、原料の安定調達を目的に、タイに2010年、地元の大手養鶏業者と合弁でGFPT Nichirei(Thailand)Co.,Ltd(以下GFN)を設立。原料から製品まで、フルインテグレーション(完全一貫生産体制)を構築しました。飼料や原種鶏にもこだわった合弁先養鶏場から生きた鶏を搬入し、処理・カットを行い、直結されている加工場で加工調理から凍結・包装まで一貫して行うシステムです。

鶏一羽を計画的にすべて有効活用

GFNのフルインテグレーションでは、安全・安心で安定した原料調達と生産ができることに加え、鶏一羽の全部位を計画的に使い尽くすことで、食品ロスを出しません。
肉はもちろん、頭部や羽根、血に至るまですべてを有効活用(下図参照)。部位ごとに最も有効な用途と販路を検討し、できる限り付加価値を付けた製品として販売します。
また、そのために必要な体制や制度の整備も行っています。例えば、もも肉と同量出るむね肉については、需要が高いのが欧州。欧州市場では、製品の品質だけでなく環境や人権への配慮が重視されます。そのためGFNでは、働きやすい環境づくりやアニマルウェルフェアなどの取り組みにも力を入れ、ISO14001(環境マネジメントシステムに関する国際規格)などさまざまな国際認証を取得しています。

鶏一羽をすべて有効活用

「ゴミ」という概念のない工場

合弁先の原種鶏から養鶏、GFNでの生産までの一貫した安全・安心への取り組みは海外でも評価され、日本向け以外の販売も徐々に拡大しています。
GFNの担当者は「この工場には、原材料について『ゴミ』という概念はありません」と語ります。資源を無駄なく使い切ることは、食品ロス削減だけでなく、廃棄処理による環境負荷を軽減します。また、付加価値を付けた製品の販売を増やして事業を拡大することは、地域社会や従業員への還元や雇用確保にもつながります。
GFNは今後もさまざまな社会課題に取り組み、持続可能なチキンビジネスを目指していきます。