安全・安心な食の知識

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安全・安心な食の知識 家庭で発生しやすい食中毒菌と殺菌方法
「知る」ことで食中毒から身を守る

食中毒を防ぐためには、まず「敵」である食中毒菌について知る必要がある。岩手大学名誉教授の品川邦汎氏に、現在日本の家庭で発生しやすい食中毒菌のワースト6を中心に、解説していただいた。

どこにいる?

カンピロバクターなど上位3つの食中毒菌は動物由来で、鶏などの食鳥や牛などの動物が保有。肉などに汚染し、また糞便から水などに広く汚染している場合がある。
「これらの食中毒菌は鶏や牛に危害を及ぼさないので、健康な状態の家禽や家畜の腸管内に生息しています。生肉には食中毒菌が付着しているという前提で、取り扱いに気をつけてください。市販の国産鶏肉では、カンピロバクターが5~7割程度汚染しているという報告もあります。これは肉が新鮮かどうかには関係ありません」

どれくらいの菌数で発症する?

食中毒菌を1~2個摂取しただけでは発症しない。発症するにはある程度の菌量が必要であるが、少ない菌量で発症するものと、多くの菌を摂取しないと発症しないものがある。
「体調や抵抗力、大人と子どもの違いなどもありますが、サルモネラ属菌は通常1万~10万個程度の菌量を摂取すると発症します。それに対して、腸管出血性大腸菌O157は100個程度の少ない菌量でも発症します。生肉の汚染菌が包丁やまな板などを介してサラダに付着し、食品中で増殖しなくても、発症する場合があります。また、食中毒患者の便(1g)の中には数百万個以上の菌が存在しており、トイレや洗面所などでの人から人への感染には注意が必要です」
また、食品中で増殖しないノロウイルス(カキなどの二枚貝に汚染していることが報告)も、非常に少ないウイルス量で発症するので、人から人へ感染するケースが多くみられる。

家庭で気をつけたい食中毒菌ワースト6

どれくらいの速度で増える?

細菌の多くは10℃以下(冷蔵庫内の温度の目安)で増殖は遅延し、-15℃(家庭の冷凍庫内の温度の目安)以下では停止するが、死滅しているわけではないので、室温に戻すと増殖をはじめる(食中毒菌は35℃くらいが最も増えやすい)。
「増殖速度の速い腸炎ビブリオは、栄養条件がいいと10分に1回分裂して2倍に増えます。1時間で約32倍、3時間経つと約1万倍になっている計算です。サルモネラやウェルシュ菌はそれよりやや遅めですが、高めの室温で2~3時間放置すると増殖して、食中毒を発症する程度の菌数に達します」
また、ボツリヌス菌やウェルシュ菌などは、酸素のない状態でしか増えない食中毒菌であり、瓶詰めや真空パックなどの食品でも過信しないことが必要だ。前日に調理したカレーやシチュー、すき焼きなどの残りも要注意。加熱によって鍋の中が低酸素状態になり、一晩でウェルシュ菌が増殖して食中毒を発症する例がある。前日の残り物などは冷蔵庫で保存し、必ず再度しっかり加熱してから食べるようにしよう。

  • ● 発症と菌数の関係
  • ● 比較的少ない菌数でも発症
    腸管出血性大腸炎、カンピロバクダー
  • ● 比較的多い菌数で発症
    腸炎ビブリオ、ウェルシュ菌、サルモネラ属菌の一部

どうすれば殺菌できる?

サルモネラ、病原性大腸菌、カンピロバクターなどの食中毒菌の多くは、75℃以上1分間の加熱でほとんど死滅する(ノロウイルスは85℃以上1分間)。食肉で汚染されやすい部位は、肉の表面。牛肉などのブロックでは、肉の中まで菌が侵入している可能性は少なく、健康な大人なら、表面を十分焼いて食べれば問題ない。ただ、挽肉やハンバーグ、細切れの肉を固めた結着肉、調味液を注入した加工肉などは、中まで菌が侵入している可能性があり、中心部までしっかり火を通す必要がある。
2011年には、焼肉チェーン店で「牛ユッケ」による腸管出血性大腸菌(O157およびO111)食中毒(患者数181名、死亡者5名)が発生した。この事件をきっかけに、厚生労働省は、罰則規定を伴った「生食用食肉の規格基準」について検討し、新基準を作成した(※)。2011年10月1日から施行された。また消費者庁でも、食肉の生食は食中毒発生リスクも高く、子どもや高齢者などの抵抗力の弱い者は生食を控えることについて、「生食用食肉の表示基準」を定めた。
また、2012年7月1日からは、牛レバーを生食用として販売・提供することが食品衛生法で禁止された。牛肝臓内部から腸管出血性大腸菌O157、ベロ毒素(VT)遺伝子が検出され、また、糞便性大腸菌も多数認められることが明らかになった。これらの菌が牛肝臓内部から検出されることは、腸管内に生息している菌が総胆管を経由して胆嚢内に侵入・増殖し、肝臓内の毛細胆管に生息していると考えられている。現状では、生レバーを安全に食べる方法がなく、中心部まで十分に加熱殺菌することと規定されている。
目に見えない食中毒菌やウイルスによる食中毒を、100%防ぐことは難しい。また、むやみに食中毒を怖がったり神経質になりすぎると、食の楽しさやおいしさを失うことになるので注意が必要だ。だが、これらの食中毒菌の特性を知り、ポイントを押さえて対応することで、危険度はかなり下げられる。食中毒予防のために、日ごろの調理や食事などについて、食材から喫食まで危害分析の視点で見直すことも大切だ。

※加工基準として牛肉塊表面から1.0cm以上の部分を60℃で2分間加熱処理し、加工調理する場合、衛生的設備を備えた施設で専用の器具などを用いて行うこと、また、保存基準として冷蔵は4℃以下、冷凍は-15℃以下とすることなどを設定。さらに、製品の成分規格として、腸内細菌群(Enterobacteriaceae)が陰性であることと定められており、本基準では腸管出血性大腸菌だけでなくサルモネラ属菌も対象とされている。

  • ● 食中毒予防のポイント
  • 汚染を広げない
    食中毒菌に汚染している疑いのある食材は、冷蔵庫などでの保存中に他の食材と接触しないようにする。
    生肉を扱ったまな板や包丁、手指などを、そのまま他の食材に触れさせない。
  • 増やさない
    低温で保存する。
    室温で放置しない。
  • 加熱殺菌する
    中心部までしっかり加熱する。

割った卵は要注意!

サルモネラを保菌している鶏の産んだ卵には、卵内にサルモネラが汚染していることがある。しかし新鮮な卵では、その菌数は一般に100個以下と少ない。現在は卵の賞味期限(生で食べられる期限)の表示が義務づけられているので、もしサルモネラの汚染卵だったとしても、その期限内であれば生卵を食べて食中毒になることはほとんどない。ただし、期限内の卵でも、殻を割って、しかも黄身と白身をかき混ぜることにより、菌が増殖しやすい状態になる。卵は、冷蔵庫で保管し、割ったらなるべく早く使うようにすることが重要だ。

Column:「抗菌加工製品」で食中毒は防げるか

現在、「抗菌加工製品」の市場は年間約一兆円規模、アジアや欧米にも広がりはじめているという。これらの製品と食中毒予防の関係について、抗菌製品技術協議会の専務理事・事務局長の藤本嘉明氏にお話を伺った。

「『抗菌』という言葉は誤解されやすいのですが、殺菌や除菌などと違って菌を死滅させるという意味ではなく、『製品の表面の細菌の増殖を抑制する』と定義されています」と藤本氏。日常生活の中で使用する抗菌加工製品は、すべての菌を死滅させるほど効果が強いものでは、触れたときに皮膚の常在細菌など有益な菌まで殺してしまい、人にも環境にも逆にリスクが高くなるためだという。
「あくまで、その製品上で菌が増殖しないようにコントロールする技術。そういう性質のものなので、抗菌加工製品を使ったからといって、それだけで食中毒を防ぐことはできません。また、抗菌効果は製品の表面上に限られます。例えば、抗菌加工のまな板などでも、表面が汚れで覆われていれば、その上についた食中毒菌には効果は及びません」
つまり抗菌加工製品といっても、無加工の製品と同様に、きちんと洗浄などの手入れをすることは不可欠なのだ。特徴や効果を正しく知って必要に応じて選択し、その良さを生かせる使い方をしたい。

抗菌製品技術協議会(SIAA:Society of Industrial technology for Antimicrobial Articles)適正で安心して使える抗菌加工製品の普及を目的に、1998年6月に発足。自主基準を満たした製品に表示する「SIAAマーク」の運用を行っている。2000年には国家規格として「日本工業企画JIS Z 2801(JIS抗菌規格)を制定、2007年には国際標準化機構(ISO)に国際規格ISO22196として承認された。

監修:
品川邦汎(しながわ・くにひろ)

岩手大学名誉教授、盛岡大学客員教授。
大阪府立大学農学部獣医学科卒業。
大阪府立公衆衛生研究所研究員を経て、1980年に岩手大学農学部助教授、
1994年に教授、2009年に名誉教授。
2011年から盛岡大学客員教授。
内閣府食品安全委員会、微生物・ウイルス専門調査会副座長、日本食品衛生学会会長のほか、東北食中毒研究会副会長なども務める。

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2022年1月24日

安全・安心な食の知識 ノロウイルス感染拡大を防ぐポイント
STOP! 食中毒講座

毎日の家庭の食事の中にも、実は、食中毒のリスクが潜んでいます。
食品工場の衛生管理も含めた品質管理を経験してきたニチレイフーズ 国内品質管理グループの田中修一郎が、
その知識と経験を生かして、家庭での食中毒予防ポイントをアドバイスします。

ノロウイルスに感染すると、約1~2日(24~48時間)で嘔吐や下痢、腹痛や微熱などの症状が出ます。軽い風邪のような症状のこともあります。ノロウイルスの流行期に嘔吐や下痢の症状があれば感染を疑い、家族などに感染を広げないために、以下のような対処を行いましょう。

嘔吐(おうと)物などの
処理ポイント

1.慌てない!

床などに嘔吐した場合、つい慌てて拭き取ろうとしてしまいがち。
しかし、むやみに拭くと逆に菌を広げてしまったり、しぶきを吸い込んで感染してしまったりという危険があります。嘔吐物が乾燥するまで放っておいてはいけませんが、1時間程度なら問題ありませんので、まずは患者が吐いたものを喉に詰まらせていないかなどを確認(特にお子様や高齢者の場合は注意)し、その後、以下の準備をしっかり整えてから対処しましょう。

必要な準備

  • 使い捨てのマスク・手袋、汚れてもいい服やエプロン(後で消毒)に着替える
    ※適当なエプロンなどがない場合は、45リットルのゴミ袋に首と腕が出る穴を開けて使い捨てガウンにするという手も(被るときには窒息に注意)
  • ペーパータオル、 消毒用の次亜塩素酸ナトリウム水溶液①②を準備

2.次亜塩素酸でしっかり殺菌

嘔吐物などの全体を覆うように、次亜塩素酸ナトリウム水溶液①に浸したペーパータオルを被せます。ここでも慌てず、しばらく(10分程度)置きます。これによって、嘔吐物中のノロウイルスがかなり殺菌されます。次亜塩素酸ナトリウム水溶液には嘔吐物などの消臭効果もあります。

その後、しぶきを立てないように静かに拭き取ります。
拭き取った嘔吐物、マスクや手袋などは、ビニール袋に入れて密閉して捨てます。その際に、次亜塩素酸ナトリウム水溶液①をビニール袋に注ぎ込んで殺菌するといいでしょう。

床や服、食器などの消毒ポイント

1.可能性あるものは全部消毒

嘔吐物の飛沫は、かなり遠くまで飛び散っていることがあります。周囲の床や壁、ドアノブなどは、次亜塩素酸ナトリウム水溶液②で拭いて消毒します(※1)。

また、嘔吐物や排泄物の他、ノロウイルス患者の使った食器や衣服、タオルなどにもノロウイルスが付いている可能性があります。それらも、次亜塩素酸ナトリウム水溶液②に10分程度浸して消毒します(※2)。なお、食器や衣服、タオルなどは、ノロウイルス患者の使ったものは別にして、洗浄・消毒してください。

  • ※1次亜塩素酸ナトリウムには金属腐食性があります。ドアノブなど金属の部分を次亜塩素酸ナトリウム水溶液で消毒したときには、十分に薬剤を拭き取ってください。
  • ※2衣類などは、次亜塩素酸ナトリウムによって変色することがあります。

2.高温殺菌も有効

ノロウイルスは高温での殺菌も有効です。85℃で1分以上の熱水での洗濯や、食器洗浄機での高温乾燥なども併用しましょう

次亜塩素酸ナトリウム水溶液のつくり方

殺菌消毒用の次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、市販の台所用や洗濯用の塩素系漂白剤(※3)を水で薄めてつくることができます。

※3

  • 「塩素系漂白剤」という表示のあるものを使用してください(「酸素系」は不可)。
  • 現在市販されている台所用の塩素系漂白剤(泡で出るタイプのものは除く)は、次亜塩素酸ナトリウムの製造時濃度6%のものが多いようです。しかし製品ごとに違いがありますので、詳しくはメーカーなどにご確認ください。また、封を開けて時間の経ったものは、濃度が薄くなっていることがあります。

次亜塩素酸ナトリウム濃度6%の 塩素系漂白剤を使用する場合

  • 嘔吐物などの処理用

    (次亜塩素酸ナトリウム水溶液①/1000ppm)
    50ml(キャップ約2杯分)を水3リットルで薄める

  • 床、食器、衣服などの消毒用

    (次亜塩素酸ナトリウム水溶液②/200ppm)
    10ml(キャップ1/2杯弱)を水3リットルで薄める

注意!!

  • 塩素系漂白剤は、酸性の洗剤などと絶対に混ぜないでください(有毒ガスが発生します)。
  • ペットボトルなどに消毒溶液をつくる場合は、お子様などが誤って飲まないように注意してください。
  • 嘔吐物などに塩素系漂白剤の原液を直接かけないでください(有毒ガスが発生することがあります)。

田中修一郎

ニチレイフーズ
国内品質管理グループ
グループリーダー

品質保証担当として、日々安全安心な商品作りに努めています。

★ STOP! 食中毒クイズ★

Q

この冬、一家でノロウイルス食中毒にかかりました。
もう今シーズンは大丈夫?

  • A
    一度かかると免疫ができるので、同シーズンに2度は感染しない
  • B
    同シーズン中でも複数回感染することがある
答えを見る

正解は B

ノロウイルスには種類が多く、人間が感染することが確認されているものだけでも35種類以上います。新型が出てくることも。免疫はウイルスの種類ごとに違うので、一度かかって免疫ができても、違う種類のウイルスが入ってくれば感染してしまいます。油断は禁物です。

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2022年1月24日

安全・安心な食の知識 ノロウイルス3つの予防法
STOP! 食中毒講座

毎日の家庭の食事の中にも、実は、食中毒のリスクが潜んでいます。
食品工場の衛生管理も含めた品質管理を経験してきたニチレイフーズ 国内品質管理グループの田中修一郎が、
その知識と経験を生かして、家庭での食中毒予防ポイントをアドバイスします。

1.洗い流す

手に付いたウイルスが口に入って感染するケースが多い、ノロウイルス。そこで、外出後やトイレ後、調理や食事の前などにしっかり石けんで手を洗うことが重要です(手洗いの方法はこちらも参考にしてください)。 石けんには殺菌効果はありませんが、手に付いた脂などの汚れを浮かせて洗い流す効果があるため、ウイルスも一緒に洗い流せます。

2.加熱して死滅させる

ノロウイルスは、しっかり加熱すれば死滅させることができます。
ただし、他の食中毒菌と比べると少し熱に強く、厚生労働省は、「ノロウイルスの汚染のおそれのある二枚貝などの食品の場合は、中心部が85℃~90℃で90秒以上の加熱」(※)を推奨しています。

3.薬剤で死滅させる

ノロウイルスの殺菌に効果が確認されているのは、次亜塩素酸ナトリウムです。ノロウイルス患者の嘔吐(おうと)物や排泄物が付いた床や服、リネン類、食器などの殺菌には、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を使用しましょう(市販の塩素系漂白剤を薄めてつくれます)。 ただし、この液で手などを消毒すると手荒れにつながり、荒れた部分にノロウイルスなどが入り込んで逆効果になることがありますので、避けましょう。

お母さん

なるほど。3つの予防方法が大事なのね!

田中先生

はい。ただし、ノロウイルスは完全に防ぐのは難しいと言われています。
特定の食品との関わりが深い他の食中毒と比べて、ノロウイルスは二次感染が多く、ノロウイルスによる食中毒の約7割は、感染ルートなど原因が不明です。
そのため、お子様が感染してしまったときなどに備えて、感染を広げない対処のポイントを覚えておくといいですよ。食品工場でも、常に万一に備えて消毒液などの準備をしています。

食品工場でのノロウイルス対策

田中先生

食品工場では、以下のような対策を組み合わせて、ノロウイルスによる製品汚染を防いでいます。

  • 手洗いを徹底する(通常の食中毒菌よりも少ない菌数で発症することなど、ノロウイルスの特徴を意識する)
  • 製造ラインに入るときには必ず使い捨てゴム手袋を着用
  • ゴム手袋を次亜塩素酸ナトリウム水溶液で消毒する
  • 原材料の安全確認を徹底する(原材料を製造する会社への指導など)
  • 製造ラインに入るスタッフの健康管理を徹底する
  • 万一の際に備えて、工場内に次亜塩素酸ナトリウム水溶液など、処理に必要な備品を備えておく

★ STOP! 食中毒クイズ★

Q

外出先でトイレを借りました。
気を付けることはABどちら?

  • A
    トイレの個室のドアには、素手で触らない
  • B
    手を洗った後は、出入り口のドアに素手で触らない
答えを見る

正解は B

外出時に、小売店や飲食店、公共施設などでトイレを借りることがありますね。商業施設や公共の場ではさまざまな人が利用しますから、ノロウイルスの保菌者がドアや蛇口などに触った可能性があります。もちろん、トイレを済ませた後にはていねいに手を洗うと思いますが、盲点になりがちなのが、手を洗った後に外に出るときの出入り口のドア。特にトイレから出た後に店舗内で食品を買って、さっき手を洗ったからとそのまま食べることも多いですね。ドアにノロウイルスが付いていれば、そこに触った手から食品を介して口に入ってしまうことになります。

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2022年1月24日

安全・安心な食の知識 ノロウイルスの特徴
STOP! 食中毒講座

毎日の家庭の食事の中にも、実は、食中毒のリスクが潜んでいます。
食品工場の衛生管理も含めた品質管理を経験してきたニチレイフーズ 国内品質管理グループの田中修一郎が、
その知識と経験を生かして、家庭での食中毒予防ポイントをアドバイスします。

お母さん

子どもの幼稚園のお友だちが、昨日の帰りに急に吐いちゃって。病院に連れていったら、ノロウイルスの食中毒だったんですって!
寒い時期でも食中毒ってあるのね。うちも気をつけなくちゃいけないかしら?

田中先生

そうですね。実はノロウイルスによる食中毒は、11月~3月の冬期に非常に多くて、年間の患者数では食中毒全体の5割を超えているんですよ。
まずは、ノロウイルスの特徴から説明しましょう

1 少ない菌数でも発症

ノロウイルスは、他の大部分の食中毒菌と比べて、非常に少ない菌数でも発症します。他の食中毒菌は食品中で増殖し、それを食べたことによって発症することがほとんどなので、増やさないように食品の温度管理をしっかりすることで大部分は防げます。 しかしノロウイルスは食品などの中では増えず、人の腸内に入ったときに一気に増えます。そのため、食べ物だけでなく、服やタオル、ドアノブなどに付着していたごく少数の菌が口に入っただけでも発症することがあります。

2 乾燥に強い

ほとんどの食中毒菌は、乾燥させれば死滅もしくは失活します。しかし、ノロウイルスは乾燥が大好き。逆に、湿度の高い環境ではおとなしくなります(死滅はしません)。 そのため、ノロウイルス患者の嘔吐(おうと)物などが時間 が経って乾燥したときにも、要注意。乾燥した嘔吐物が目に見えないチリ状態になって空気中に浮遊し、その中にいるノロウイルスを吸い込むことによって発症することがあります。嘔吐物などを適切に処理することが、感染を広げないために重要です。

3 アルコールでは死滅させる事ができない

ほとんどの食中毒菌は、アルコール殺菌で死滅します。食中毒予防に、手洗いの後にアルコール噴霧を習慣にしているご家庭もあるでしょう。しかし、ノロウイルスにはアルコールは効きません!「アルコール殺菌したから」と安心するのは、冬場は逆に危険。ノロウイルスに殺菌効果があるのは、次亜塩素酸ナトリウム(市販の塩素系漂白剤などに含まれている成分)です。しかし、次亜塩素酸ナトリウムはアルコールのように溶液を噴霧するのには向きません。ノロウイルスの予防については、殺菌よりも手洗いをしっかりして「洗い流す」ことを重視しましょう。

お母さん

ノロウイルスってやっかいねー。防ぐためには、どうしたらいいの?

田中先生

食品工場では、とにかく工場内に持ち込ませないための対策を徹底しています。家庭での予防の方法は、次回紹介します。

★ STOP! 食中毒クイズ★

Q

ノロウイルス予防はABどちらが正解?

  • A
    石けんで爪の間や手首までしっかり洗う
  • B
    石けんで軽く手を洗った上で、アルコールを噴霧する
答えを見る

正解は A

ノロウイルスは、アルコールでは死滅させることができません。アルコール噴射することによって、手に付いた他の金が死んでノロウイルスだけが元気に生き残る、という危険もあって、ノロウイルスの予防には逆効果。他の食中毒の危険が少ない冬の間は、アルコール噴射に頼らずに、その分しっかり手を洗うように心がけましょう。

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2022年1月24日

安全・安心な食の知識 ハンバーグづくり 【焼く・保存する】
STOP! 食中毒講座

毎日の家庭の食事の中にも、実は、食中毒のリスクが潜んでいます。
食品工場の衛生管理も含めた品質管理を経験してきたニチレイフーズ 国内品質管理グループの田中修一郎が、
その知識と経験を生かして、家庭での食中毒予防ポイントをアドバイスします。

焼く

お母さん

さあ、ハンバーグを焼くわよ!
今日はフンパツして牛肉100%のひき肉にしたから、
レアが好きなお父さんの分は、外側だけカリッと焼けば大丈夫かしら?

田中先生

田中先生の解説

表面だけ焼けば大丈夫なのは、牛肉の塊(ステーキなど)の場合だけです。
塊肉の場合は、食中毒の原因菌は表面だけについているので、表面をしっかり焼けばOK。
しかし、ひき肉は全体に原因菌が広がっている可能性がありますから、ハンバーグは中までしっかり火を通さないと食中毒の危険があります。サイコロステーキなどの成型肉、調味液を注入した肉なども、中まで原因菌が侵入している可能性がありますから、ひき肉料理と同様です。

一枚肉とミンチ肉の違い

保存する

お母さん

ハンバーグ、おいしかったわね。
いっぱいつくっちゃったから、残りは明日の朝ごはんのおかずにしましょう。
お皿にラップをかけて、と。あら、冷蔵庫、結構いっぱいね

田中先生

田中先生の解説

実は、食中毒の原因菌の中には、加熱してもなかなか死なないものがいるのです。
例えばジャガイモやニンジンなどの野菜などについているウェルシュ菌は、芽胞という固い殻を被った状態でいるときには、煮込んだり炒めたりしても生き残ります。
そして、条件が良くなると増殖を始めるのです。
また、ハンバーグを入れたお皿に触れたときなどに、食中毒の原因菌が付着してしまうことも考えられます。
最初はごくわずかな菌数でも、7~8時間も経てば相当な数に増殖します。
加熱した食品でも、油断せずに必ず冷蔵庫保存してくださいね。

調理後も冷蔵庫保管

調理したハンバーグを2時間以上置く場合は、冷蔵庫で冷やした方が良いです。
食べる直前に電子レンジでチンして、おいしく頂きましょう。

田中修一郎

ニチレイフーズ
国内品質管理グループ
グループリーダー

品質保証担当として、日々安全安心な商品作りに努めています。

★ STOP! 食中毒クイズ★

Q1

牛肉100%のハンバーグ、正しい焼き方は?

  • A
    表面だけしっかり焼けば、中はレアでも大丈夫
  • B
    たとえ牛肉でも、中までしっかり火を通す
答えを見る

正解は B

Q2

ハンバーグを翌日まで保存するとき、どうする?

  • A
    必ず冷蔵庫に入れる
  • B
    加熱して食中毒の原因菌は死んでいるはずだし、一晩くらいなら室温で
答えを見る

正解は A

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2022年1月24日

安全・安心な食の知識 ハンバーグづくり【下ごしらえ】
STOP! 食中毒講座

毎日の家庭の食事の中にも、実は、食中毒のリスクが潜んでいます。
食品工場の衛生管理も含めた品質管理を経験してきたニチレイフーズ 国内品質管理グループの田中修一郎が、
その知識と経験を生かして、家庭での食中毒予防ポイントをアドバイスします。

お母さん

食中毒が恐いし、まずは手をしっかり洗わないとね

田中先生

田中先生の解説

殺菌剤入りの石けんを使って爪の間などまでしっかり洗えば、かなりの菌を除去することができます。
しかし、人間の手には細かいしわなどがたくさんありますから、その奥に入り込んだ菌まで完全にゼロにすることはできません。

食品工場ではどうしているの?

工場に入る前には、殺菌剤入りの石けんで手首までしっかり洗い、爪の間は専用のブラシで洗ったうえで、アルコール消毒しています。
また、工場内ではビニール製の手袋をはめて作業を行います。

食品工場の手洗い方法

手順1一旦、軽く洗う

一旦、軽く洗う事により、石けんの効果を発揮する事が出来ます。

次へ

手順2石けんをつける

泡立つ量を目安にします。

次へ

手順3手指をキレイに洗う

Check
Point!

各手順は5回ずつ繰り返す

1.手の平と手の平を洗う

2.手の平で手の甲を洗う(交互)

3.指の間、親指を洗う(交互に)

ここも
大切

親指洗い
(左右5回ずつ)

4.指の間を洗う

5.両手首を洗う

6.指先、爪の間を爪ブラシで洗う(交互)

次へ

手順4流水ですすぐ

石けんをきちんと洗い流す。(20秒程度)
※この時に使用した爪ブラシは水洗いし、軽く振って元の場所に戻す。

次へ

手順5水気を良く乾かす

水気が無くなるまで良く乾かしてください。(10秒程度)
※ジェットタオルの内壁に手がつかないようにしてください。

次へ

手順6アルコール噴射

アルコール噴霧機に手をかざします。アルコールをよくすりこんで下さい。
※手が濡れていると、アルコール効果がなくなります。

家庭では?

家庭での手洗いの注意事項 殺菌力の強い洗剤などで洗いすぎると…手が荒れてしまい、傷口に黄色ブドウ球菌などの食中毒の原因菌が住み着いてしまうこともあります。

手をしっかり洗うことは大切です。しかし、あまり神経質になりすぎて殺菌力の強い洗剤などで洗いすぎると、皮膚を守る常在菌まで殺してしまって、手荒れにつながることも。手袋をはめて作業するというのも、家庭での調理には向かないでしょう。

また、家庭のキッチンは、工場のように衛生管理に気を配った閉鎖空間ではありません。ほかにも菌が入り込む可能性はいろいろとあるので、手だけを過度に注意しても食中毒は防げません。
適度に手洗いをした上で、「菌が残っている可能性はある」ということを念頭に、温度管理や加熱を適切に行うことで食中毒リスクを減らしましょう。

お母さん

まずは下ごしらえね。えーっと、何からやろうかしら

田中先生

田中先生の解説

料理の下ごしらえは、基本的に「肉・魚はいちばん最後に」と覚えておいてください。理由は2つあります。

1つは、 肉・魚はできるだけ低温に 保っておきたいからです。

肉・魚には、サルモネラやカンピロバクター、腸炎ビブリオなどの食中毒の原因菌がついている可能性が高いのです。食中毒が起きるのは、それらの原因菌が増殖してしまったとき。増やさないためには、温度を低く保つことが重要です。
細菌の多くは、10℃以下では活動が鈍ってあまり増えなくなるのです。
そのため、肉・魚はギリギリまで冷蔵庫に入れておいて最後に下ごしらえをすることで、温度が上がって原因菌が増える隙を与えず、食中毒予防に有効なのです。

2つめは、 二次感染の予防 です。

肉・魚を切ったまな板や包丁、手などには、肉・魚についていた食中毒の原因菌が移っている可能性があります。そのまな板や手などで、例えばサラダの野菜を扱うと原因菌が移り、さらにそれが夕食までの間に室温に置かれていると、原因菌がどんどん増えてしまって食中毒を起こす原因になります。
そのため、肉・魚を扱った手や器具は、必ずすぐに洗うことが大切です。
しかし、洗っても残ってしまう可能性も。そこで、原因菌がついている可能性の高い肉・魚はいちばん最後に扱うことで、他の野菜などへの二次感染を防げるのです。

食品工場ではどうしているの?

野菜、肉などの原材料は、それぞれ専用の器具でカットなどの下ごしらえをします。ハンバーグのラインでは、肉は低温に保つために半解凍状態でミンチにし、すぐに冷蔵庫に戻します。すべての材料の下準備を済ませてから一気に混ぜて、成型、焼きの工程に入るのですが、常に温度を管理して、少しでも時間が空くときには冷蔵庫に戻すように徹底しています。

家庭では?

まな板は、肉・魚用と野菜用を分けるようにすると安心です。
また、肉・魚を冷蔵庫から出してちょっと時間が経ってしまったかな、と感じたら、指で触ってみましょう。「冷たい」と感じるようなら、まだ大丈夫。生ぬるくなっていたら(つまり、食材の温度が体温に近くなっている)、すぐに冷凍庫へ。温度を急速に下げるためには、冷凍庫が最適です。

包丁とまな板 肉や魚を扱った包丁やまな板には、肉や魚についていた食中毒の原因菌が移っている可能性があります。お肉や魚は専用の包丁やまな板を使うのが良いです。野菜や生で食べる食品は専用の包丁やまな板を使うことで、食中毒の原因菌が移るのを予防します。
お母さん

タマネギのみじん切りOK、 パン粉と牛乳、卵の準備もOK! さぁ、じゃあここにひき肉を入れて、塩こしょうして混ぜて、と・・・

ピンポーン(玄関のチャイム)

お母さん

あら、誰かしら? このハンバーグダネどうしよう? ちょっとの間だからこのままでいいか・・・

田中先生

田中先生のアドバイス

だれかが訪ねてきたり、電話がかかってきたときには、調理中の肉・魚は必ず冷蔵庫に入れましょう!ついうっかり話し込んでいるうちに、食中毒の原因菌はどんどん増えますよ。特にハンバーグダネなどのひき肉料理は、原因菌が増えやすいので、注意が必要です。おすすめは冷凍庫に入れること。「でも、冷凍庫は冷凍食品などでいっぱい」という場合は、冷凍庫の中味をとりあえず冷蔵庫に移して、空いたスペースに調理中の食材を入れるといいですよ。冷凍した食品は、数十分程度なら冷蔵庫でも大丈夫です。

冷蔵庫の利用 下処理した材料は短時間であれば冷凍庫に保管するのが良いです。表面が凍ってしまってもレンジでチンせず、常温で解凍しましょう。レンジを使うと部分的に温度が高くなりすぎ、食中毒の原因菌などが増えてしまいます。
お母さん

食中毒の原因菌って、室温だとすぐに増えちゃうのね。
でも、ハンバーグはどうせ焼くんだから、ちょっとくらい
原因菌が増えても、加熱したら殺せるから大丈夫なんじゃないの?

田中先生

田中先生のアドバイス

実は、食中毒には、大きく分けて2タイプあるのです。
1つは、 「感染型」といって、生きた原因菌が体に入ってくることで、食中毒を発症するタイプ。 このタイプは、加熱することで菌を殺し、食中毒を防ぎます。
もう1つは、 「毒素型」といって、原因菌が増殖するときにつくる毒素が原因で発症するタイプ です。こちらは、つくる毒素が熱に強いことが多く、加熱して原因菌自体は死んでも、毒素は残って食中毒の原因になるのです。
「毒素型」には、黄色ブドウ球菌やセレウス菌、ボツリヌス菌など毒性の強い原因菌があるので、要注意です。
この2つのタイプの原因菌がどこにどのようについているかは、目で見てもまったくわかりません。
ですから、「ついているかもしれない」という前提で、とにかく増やさないこと、つまり、食材の温度を低く保つことが重要なのです。

食中毒タイプ 感染型 生きた原因菌が体に入ってきて、それが体の中で増えてくると食中毒を発症するタイプは『感染型』といいます。サルモネラ菌や腸炎ビブリオ菌などが該当し、食品を食べる前に加熱することで、これらの原因菌は死滅させることが出来ます。 毒素型 食品中で原因菌が増殖する時に作る毒素を食べてしまうことによって食中毒を発症するタイプは『毒素型』といいます。黄色ブドウ菌やセレウス菌やボツリヌス菌などが該当し、食品を食べる前に加熱しても、これらの原因菌は死滅させることが出来ますが、毒素を無毒化することは出来ません。原因菌を増やさないように、低温管理するしかありません。

★ STOP! 食中毒クイズ★

Q1

石けんでしっかり手を洗えば、菌はぜんぶ退治できる?

  • A
    殺菌剤入りの石けんでていねいに洗えば、菌はゼロになる
  • B
    数は減らせるけれど、全滅はできない
答えを見る

正解は B

Q2

ハンバーグをつくるときの手順は、どっちが先?

  • A
    野菜をみじん切りにする
  • B
    ひき肉をこねる
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正解は A

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2022年1月24日