04F Logistics Center Floor インタビュー(業革で変化を遂げる)

社会的責任を果たし、 より快適な就業環境をつくるための DXを駆使した業務革新
業務革新部門
株式会社ニチレイロジグループ本社 業務統括部・部長 勝間 和久

日本は少子高齢化が進んだ結果、2008年をピークに人口が減り続け、2050年には1億人を下回ると予想されています。こうした人口減少は社会のさまざまな場面で大きな影響を与えますが、その一つが生産年齢人口、つまり働き手の不足です。

食料供給の要となる低温物流を担うニチレイロジグループでは、そうした未来を見据え、人口減少社会下でも社会インフラとしての責任を全うし、かつ従業員が働きやすい環境をつくるために、デジタル化や自動化などによる業務革新を積極的に進めています。

現場からの積極的な発信を促す

業務革新のアプローチは、大きく分けてデジタル化と自動化の2つです。ただ、冷蔵・冷凍施設という過酷な環境では、一般的な自動化機器をそのまま使用することが難しいため、当面はデジタル化による業務の省力化に軸足を置きつつ、技術の進化に合わせて自動化も積極的に追求していく、「人と機械のベストミックス」という考え方で進めています。

現在の主要な施策は、「事務業務のRPA化」「車両管理におけるトラックバース予約システムの導入」「庫内作業のタブレット化」の3つ。

「事務業務に関しては、それまでの紙ベースの業務からデジタルベースの業務への転換、あるいはRPAなどを駆使した自動化が、初期の頃からスムーズに進んできました。一方で、各物流センターにおける作業のデジタル化、自動化は、個々の技術の活用が必ずしも全体最適につながらないことも多く、試行錯誤しながら進めているというところです」

しかもこれらの業務革新の推進には、事務や作業といった業務全般の改変を伴うため、現場で実際に業務を遂行するスタッフの納得と共感が不可欠です。そのため、2018年には全国50カ所以上で「業革セミナー」を開催し、現場のスタッフにその意義や目的の共有を図りました。その結果、トップダウンだけでなく、現場から積極的にアイデアが発信されるボトムアップの態勢をつくることができています。

業務改善のDNAがニチレイロジグループの強み

プログラム言語の知識なしで誰もがPC上の定型作業を自動化できるRPAは、さまざまな事務業務を効率化してくれる強力なツールです。

「RPAは、2017年に全国の10カ所の事業所をモデルセンターに選んで、そこでトライアルを始めました。そうすると、現場の人たちが思っていた以上に興味を持ってどんどん業務を自動化し、小さな事業所で年間1000時間以上のRPA化を実現する事例も生まれました。もともと私は、個々の従業員が持っている業務改善のDNAみたいなものが、ニチレイロジグループの強みだと思っています。そこは信じていいんじゃないかと思って、現場が主役になる形をどんどん作り、そこから仲間を増やしていく施策を立てていきました」

働き方改革関連法の適用猶予期間終了に伴い、トラックドライバーの時間外労働上限規制が適用され、従来のままでは物流の停滞が懸念される2024年問題への対応は、物流事業者に限らず、サプライチェーン全体で解決を図るべき喫緊の課題です。当社では2017年よりトラックバース予約システムの導入を進め、現在では50事業所で活用し、車両待機時間の大幅削減につなげています。

タブレット化は、物流センターの庫内作業を効率化するための第一歩となる施策です。この改革により、紙ベースの作業では取得できなかった精確な作業データの収集が可能になり、この可視化されたデータは自動運転フォークリフトや無人搬送機AGVなどの自動化機器導入のベースともなります。

「企画やシステムなどの仕事の楽しさは、新しいシステムを入れたりすると、人の動きが変わるじゃないですか。その結果、その仕事をしていた人が楽になって喜んでもらえ、自分がこうじゃないかと思った仮説が正しいとわかる。それが、単純にすごく嬉しいんです。そもそも私は、入社して最初に配属された物流センターで、『勝手に業務改善』みたいな感じで毎月目標を立ててやっていたんですけど(笑)、その時の楽しさが現在のキャリアにつながっているんだと思います」

守りの業革から攻めの業革へ

これまでの業務革新の結果、リソースシフトが進んでいます。また、熟練者のノウハウをタブレットやAIなどのシステムに置き換えることで、「誰でもできる化」が実現しつつあります。この「誰でもできる化」は、作業の属人化を解消して熟練者の技能伝承を可能にするだけでなく、システム化されたスキルが将来の機械化のための基礎データともなっていきます。

また事務業務については、RPAをはじめとする業務システムを在宅などリモートワーク環境でも活用できるようにするためのサテライトオフィスはじめとした基盤を整備。

さらに、VRやロボットを使った庫内作業の遠隔化も視野に入れており、これら「どこでもできる化」も並行して進めています。

ただ、「事務業務のRPA化」「車両管理におけるトラックバース予約システムの導入」「庫内作業のタブレット化」を中心とした業革の第1フェーズは、人口減少社会への対策という、いわば守りの業革という側面を持っています。もちろん、これらは今後も進めていく必要がありますが、次のフェーズでは、お客さま、社会に対する新たな価値を生み出す、攻めの業革、攻めのDXを推進することが求められます。

「例えば、現在お客さまに提供している入出庫データに、IoTで取得した冷凍機のメンテナンスデータを加味したり、AIを活用してCO2などの環境関連の情報を加えたりといったサービスを、今計画しています。また海外事業においても、日本品質の物流システムを世界のスタンダードへと展開していくために、物流管理クラウドサービスeLixxiを海外向けに再構築することも、今後必要になると考えています。そして、そのためには、当社のDNAを脈々と受け継ぐ人財の育成が何よりも重要です」