ニチレイ75年史
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■魚肉ハム・ソーセージ登場の背景 食生活が西洋化する中、魚肉ハム・ソーセージ※23 の商品化が進み、1952年、「明治屋のスモークミート※24 」の名で全国販売が開始された。 そうした折、「原爆マグロ」問題が起きた。1954年3月に米国がビキニ環礁で行った水爆実験は、事前の予告よりも広範囲に被害を及ぼし、日本のマグロ漁船「第五福竜丸」をは41および「日冷」(国内向け)のブランドを使ってきた。しかし販売競争が激しくなる中、銘柄品であることを視覚に訴える新たなシンボルマークが必要となった。そこで、イメージも明るく、清潔感があり、親しみが持てて、しかも伝統あるスター印に着目。藤野缶詰と協議を進め、1959年6月、その商標権の購入に至った。 当社が購入した商標の範囲は、第44類(茶・コーヒー・チョコレートなど)、第45類(干魚・塩漬魚・魚介・鳥獣肉・果実など)、第47類(穀類・澱粉・凍豆腐など)、第56類(魚粕・肥料など)、第20類(車両類)、第57類(木竹材・木皮など)を含んでいた。この新しいブランドを使用するに当たっては、当社との関連性を打ち出すため、「☆」を中心とした「日冷☆スター」を基本にいくつかの複合図案を作成し、関連商標として登録した。 スター印を活用し、消費者に愛され親しまれるブランドを確立するため、1960年頃から宣伝活動には一段と力を注いだ※22 。冷蔵工場の壁面や車両にも表示するとともに、食品の販売子会社の社名には「日冷スター」を使うようになった。※19 国民1人当たりの水産缶詰の消費量は1956年の0.64㎏から1961年に1.91㎏へと約3倍に拡大した。※20 水産缶詰も果実缶詰も旬のある商材が多く、時期による繁閑が激しく、在庫負担も大きかった。※21 缶詰の製造会社。缶詰以外の食品の包装・充填業務を行う会社もパッカーと呼ばれる。※22 1955年にラジオCMを開始、1957年からラジオ番組「オシズさんハイ!」を提供していたが、スター印取得後はテレビやラジオの宣伝を増やした(1960年にテレビのカラー放送が開始)。※23 スケトウダラなどのすり身と調味料をケーシングして加熱する魚肉練製品。※24 1949年に西南開発協同組合(愛媛県)が魚肉ソーセージの開発に成功。1951年に西南開発(株)を設立し、魚肉ソーセージ「スモークミート」を開発。1952年より(株)明治屋を全国販売元として「明治屋のスモークミート」として販売を開始した。第2章 戦後日本の復興に製氷・冷凍事業と水産・食品事業で貢献さまざまなところで使用されたスター印■缶詰事業の拡充 缶詰の需要が増える※19 と、各社は設備拡充や新製品開発に注力した。その結果、日本の水産缶詰の生産量は1955年の991万函から1957年に1,601万函、1961年には2,694万函と増加した。ミカン、モモなどの果実缶詰※20 も1954年の291万函から1955年の513万函に生産が増え、1961年には1,382万函を記録した。水産缶詰の輸出も1955年の439万函から1961年の810万函と約1.8倍に増えた。 当社は缶詰の生産体制を拡充して供給増を図った。1957年頃から1960年にかけて自営工場(米子、吹田、博多、船橋)を新設するとともに各地の有力工場を系列下とした。東北で1958年に丸椿缶詰(株)の工場を買収して大船渡缶詰(株)としたのに続き、大栄食品(株)(現 ニチレイフーズ山形工場)、桑折食品(株)、新潟ではアサヒ缶詰工業(株)、九州では(株)長崎洋行(現 同長崎工場)の株式を取得、新海アスパラガス(株)と共同で球磨アスパラガス(株)を設立した。また東京食品(株)と協力し、パイナップル事業も兼ねて沖縄・石垣島に南琉産業(株)を設立した。委託生産も積極的に行い、新海アスパラガス、兼松缶詰など30社に上る有力パッカー※21 と提携し、自社では生産しきれない各種缶詰を委託した。 当社の缶詰生産体制は1960年にほぼ完成し、自営7工場、系列子会社6社、協力工場約18社を擁するまでになった。そして水産缶詰に果実や農産品、調理品なども加えた多品種施策で、総合パッカーとしての地歩を固めていった。その結果、販売数は1959年には100万函を突破し、翌60年は160万函を記録、金額も30億円を超えた。columnスターブランドの取得 当社の缶詰事業で忘れてならないことの一つに、商標「スター印」がある。これは藤野缶詰(株)が1891(明治24)年、北海道開拓使直営の缶詰工場払い下げを受けるに当たり、開拓使が使用していた「北辰の五稜」の商標も譲り受けて使用していたもの。いわば日本の缶詰の発祥を伝える縁のあるマークだった。 それまで当社は1950年に水産品にはサークルワンブランド「①」を商標として制定し、缶詰には「Nichirei」(輸出向け)

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