ニチレイ75年史
207/320

●右肩上がりの成長を実現した2010年代以降 2011年に起きた東日本大震災では、その影響が広がる中、10tトラックで商品を供給するなど、被災地に多くの冷凍食品を届けた。食のインフラとして安定供給を続けることの重要性に加え、安全で機動力のある冷凍食品の価値が再認識された。特に、それまで冷凍食品をあまり使用していなかったシニア層の利用が増え、リピーターの増加などおいしさの認知が進んだことから、家庭用を中心に需要が高まっていった。 冷凍食品の生産量は、業界全体で1969年に10万tを超えて1990年に100万t超、大震災から2年後の2013年には150万t超と拡大した。2017年に160万tを超えたが、2020年はコロナ禍の影響で業務用が大幅減少し、155万tにとどまった。一方で、2019年に国民1人当たりの冷凍食品年間消費量が23.4kgと過去最高を記録した。 冷凍食品市場の伸長に対応するため、組織面では、2013年、業務用事業部、家庭用事業部、広域事業部を新設。従来の機能別組織から事業別組織に刷新し、事業遂行の迅速化を図り、よりタイムリーに市場ニーズをとらえた商品を開発できるようになった。たとえば、2016年には有名シェフが監修した業務用「シェフズスペシャリテ」シリーズを発売。「日常以上、ハレ未満」をコンセプトに、人々の「プチハレ需要」をとらえ、好評を博した。2019年には、シニア給食における人手や調理設備不足の課題を解決する業務用「ボイルでサクッと」シリーズを発売した。コロッケ等の揚げ物をボイル調理でおいしく提供できる画期的な商品で、調理担当者の負担を軽減しながら、まるで揚げたてのようなおいしさを届けた。家庭用では、2017年に「特から」を発売した。「特別」なおいしさ、食べ応えのある「特大」サイズ、「おトク」なボリュームパックの3つの「トク」にこだわったもので、発売1年で冷凍から揚げ売上No.1になり、「本格炒め炒飯」と並ぶ大型商品に成長した。2020年には箸で切れるほどやわらかな「極上ヒレかつ」を発売し、一躍ヒット商品になっている。ら、鶏種や養鶏にこだわった良質な生鳥を仕入れ、さらに屠鳥から加工まで一貫して生産できる強みを有する。安定して高品質な商品を供給・開発する体制を構築した。 さらに近年の電子商取引(eコマース)の高まりを受け、2020年4月には、ウエルライフ事業部にeコマース部を設置した。自社通販サイトのみならず、ECモールへも出店するなど、積極的な事業拡大を図っている。また、2021年4月にサステナビリティ推進部を新設し、SDGsへの取り組みを加速させている。 海外での事業規模も急拡大させた。2012年には米国でアジアンフードの冷凍食品を販売するイノバジアン・クイジーンを子会社化し、海外事業の一つの柱とした。日本同様に米飯とチキンを主力カテゴリーとしており、北米市場でのさらなるカテゴリー拡充とシェア拡大を図っている。181※1 東急百貨店東横店となったが、渋谷エリアの大規模再開発に伴い、2020年3月に閉店。※2 2021年8月、発売から20周年を迎えた「本格炒め炒飯」が冷凍炒飯カテゴリーにおける最新年間売上世界No.1、「最大の冷凍炒飯ブランド」として、ギネス世界記録に認定された。肉、衣、揚げにこだわった「極上ヒレかつ」事業編

元のページ  ../index.html#207

このブックを見る