ニチレイ75年史
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●冷凍食品の開拓者として 2021年3月期における加工食品事業の売上高は2,254億5,000万円で、全社売上高5,727億5,700万円の39%を占め、営業利益も171億6,700万円と全社営業利益329億4,900万円の52%と、低温物流事業とともに、当社グループの主力事業となっている。しかし、そこに至るまでには、冷凍食品のフロンティアカンパニーゆえの長く険しい道のりがあった。 当社は帝国水産統制の時代から、冷凍の魚を軍納しており、戦後は進駐軍に納めていた。食糧難の当時、製氷工場の設備能力に余力があったことから、1946年に果汁入りアイスキャンディ「レイカ」を発売して好評を博したが、これは製氷事業の一環、いわばサイドビジネスで、食品事業としての位置づけではなかった。1950年に缶詰事業なども含めて加工食品事業が1つの独立した事業として体系化され、再び冷凍食品の開発に着手した。1951年には米国輸出向けに冷凍ミカンの生産を開始したが、翌年キャンセルされた。同年、聖心女子学院のバザーで生ジュースとして試売し好評。東京・渋谷の東横百貨店※1 でも冷凍イチゴ、冷凍ミカンのジュース販売を行ったところ評判となった。他のデパートからもジューススタンドの開設依頼が相次ぎ、「日冷凍果ジュース」は人気商品となった。冷凍食品がまとまった売上高を形成し、全社売上高に登場するのは1960年度が初めてだった。●調理冷凍食品の普及に努めた1950年代 調理冷凍食品のはしりとなる冷凍茶碗むし(1954年発売)の開発に成功し、デパートで販売を始めたのは、まだ家庭に電気冷蔵庫が普及していない時代だった。当時は、「冷凍」というと戦時中に配給された品質の良くない冷凍魚のイメージが強く、あまり良い印象はもたれていなかった。また「凍ったまま油に入れると爆発する」といった誤解もあったという。だが、この年度の売上高3億7,400万円は、全社売上高216億3,300万円のわずかに1.7%を占めたにすぎなかった。 そうした中、当社は「冷凍を中心とする食品事業の多角経営」という新しいビジネスモデルを目指して、新規事業だった冷凍食品事業をその柱とするべく取り組みを続け、今日の主力事業に育ててきた。176200,000150,000100,000(百万円)250,00050,00019474849050515253545556575859606162加工食品事業の売上高の推移凍果ジューススタンド“くらしに笑顔を”─世界で最も信頼される食品企業を目指して加工食品事業

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