ニチレイ75年史
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■米国の医療機器会社を買収 2019年3月、ニチレイバイオサイエンスは、米国の医療機器会社Pathcom Systems Corporation(以下、パスコム社)を買収した。 パスコム社は、がんの診断に使用される医療機器の開発と生産を行い、米国、欧州および中国において販売を行っている。買収により、医療機器と診断薬の開発、生産、販売を一体で運営するとともに、米国における診断薬事業を推進し、グローバルな事業展開を目指した。■フィンランドのUPM社と業務提携 ニチレイバイオサイエンスは、2020(令和2)年3月、フィンランドのUPM Biomedicals(以下、UPM社)と日本におけるUPM社製の3D細胞培養関連試薬の販売契約を締結した。同社はフィンランドの大手林業会社のバイオメディカル製品部門で、ハイドロゲル製品のGrowDexシリーズをグローバルに展開している。GrowDexシリーズは、動物由来原料不使用という特徴を持ち、取り扱いが非常に簡単な試薬。たとえばがん細胞研究、個別化医療、再生医療、Organ-on-a-chip、および創薬研究等での利用が期待された。■Biocartis社と日本市場で業務提携 ニチレイバイオサイエンスと革新的な分子診断薬企業であるベルギーのBiocartis Group NV(以下、Biocartis社)は、2018年12月、同社のIdylla Systemの腫瘍関連の分子診断(MDx)製品について、2019年1月から適用される日本における薬事申請業務および独占販売に関する契約を締結した。 Biocartis社のIdylla Systemは、短時間で結果が得られる完全に自動化された遺伝子検査システムである。近年、がん治療においては、個別化医療の進展とともに分子標的治療薬の使用が急速に拡大しており、治療方針の決定には、病理学的標本の遺伝子検査が重要に内外におけるグローバルな交流によってイノベーションを促進し、多様化する顧客ニーズに応えることとした。 なお、同社は東京都東村山市に開発センターを有しているが、東京都の道路計画への協力の必要が生じたことなどから、新拠点設置を決めた。グローバルイノベーションセンターなっている。ニチレイバイオサイエンスは、それまでの免疫組織化学染色製品に加え、Idylla Systemによるがんの遺伝子検査製品を取り扱うことによって、医療現場の広範なニーズに応え、患者の適切な治療に貢献することとした。169※19 血液細胞に由来するがんの一つで、白血球の一種であるリンパ球ががん化した悪性腫瘍。第10章 未来へ~新しい顧客価値の創造へ向けたニチレイグループの取り組み■インフルエンザウイルスキットの開発 2018(平成30)年7月、塩野義製薬株式会社は体外診断用医薬品であるインフルエンザウイルスキット「ブライトポックFlu・Neo」を発売した。この製品は、ニチレイバイオサイエンスが開発し、同年5月、製造販売承認を取得したもので、塩野義製薬が販売を行う。 同製品は塩野義製薬が現在販売しているブライトポックFluの改良品で、インフルエンザウイルスA型抗原およびB型抗原の検出について高い感度を持っている。また、陰性例の判定時間は、従来品の10分から5分に短縮されており、鼻腔ぬぐい液の陽性例では1分以内に90%以上の患者の判定を可能とした。■悪性リンパ腫の診断補助に用いる 体外診断用医薬品の製造販売承認を取得 2020年3月、ニチレイバイオサイエンスは、ALK(Anaplastic Lymphoma Kinase)タンパクを検出する組織検査用腫瘍マーカーキット「ヒストファイン シンプルステインMAX-PO(MULTI)ALK」の製造販売承認を取得した。 これは、病理組織標本を検査対象とし、免疫組織化学染色法を用いて、組織、細胞内のALKタンパクを検出することで、悪性リンパ腫※19 の病型分類を行う際の診断補助に用いる体外診断用医薬品である。悪性リンパ腫を対象に

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