ニチレイ75年史
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■AIの活用~食品工場の 「最適生産・要員計画自動立案システム」が本格稼働 ニチレイフーズは株式会社日立製作所との協創を通じ、AIを活用して最適な生産計画および要員計画を自動立案するシステムを国内4拠点の食品工場に導入し、2020(令和2)年1月から順次、本格運用を開始した。 このシステムは、熟練者が立案する複雑な制約条件を考慮した計画を高度なAI技術により再現・進化させるもので、ニチレイフーズは同システムの導入によって、これまでの当該業務時間を大幅に短縮することが可能となった。加えて、熟練者以外の従業員がよりフレキシブルな生産計画・要員配置を作成できることから、労働時間の低減《加工食品事業関連》■AIを用いて品質向上とフードロス削減を実現 2018(平成30)年2月、ニチレイフーズは近畿大学と共同ついては「MS Nose」技術をはじめとする独自の手法を組み合わせて、おいしさの見える化に取り組んできた。これらの知見を人工知能(AI)に組み込むことで、新たな食嗜好分析システム「conomeal」を開発した。個人の食意識、気分、環境から、食の好みをAIが分析し、個人に合う食を提案するシステムで、好みを診るという意味と、食事を意味するmealをかけ合わせて命名した。なお、AI技術については、北海道大学情報科学研究院の川村秀憲教授をアドバイザーに迎え、開発に当たった。 従来の提案型AIは、料理の画像や食材購入履歴など過去の実績データを活用するが、食意識タイプや気分などの心理的要素を分析に利用しているところが、当システムの画期的な点となった。 具体的なサービスとして個人向けに開発したのが、つくりおき献立を提案する「conomeal kitchen」というスマートフォン用アプリである。ユーザーが6つの質問に答えることで、AIはユーザーの食の好みを分析し、その人に合った献立を提案。利用を重ねることで、AIはユーザーの好みを学習していく。このアプリの大きな特徴は、つくりおきする際の最適な調理手順を提案することで、効率よく作れる上、食材を無駄なく使える献立案を提供する点。2020年11月より本格運用を開始した。また2021年8月には、同様のサービスを展開して広くユーザーを獲得していた株式会社ミーニューの全株式を取得した。11月からはミーニューとサービスを統合することになる。スマートフォン用アプリ「conomeal kitchen」でAIを使用した選別技術を開発した。 ニチレイフーズでは原料受け入れ時に金属探知、X線、近赤外線、光学・色彩などの選別技術を活用して原料の品質保持・管理を行っている。しかし不定形な原料や混入している夾雑物の位置や角度などにより判別の精度が下がるため、選別後に人手や目視による検品が必要となることも多いのが現状である。特に鶏肉原料選別では3大夾雑物である「硬骨」「羽根」「血合い」をいかに取り除くかがポイントとなる。「硬骨」については、一般的にX線により選別技術が確立されているが、「羽根」「血合い」の除去には全量を人手や目視で対応せざるを得ない。そのため作業者の負担が大きく、また人手や目視だけでは判別しにくい検査もある。 このような背景の下、新たな選別技術の開発を進めてきた。共同開発した選別技術の導入により、従来比で夾雑物除去率が約1.5倍、処理スピードが約4倍となった。また、原料の品質保証が格段に向上するとともに、生産性の向上や労働環境の改善、人手不足への対応、環境負荷の低減など多くが期待された。さらに夾雑物をピンポイントで探し当てるため、余分な良品を除去することなく、フードロスの削減にもつながることとなった。きょうざつきょうざつ161第10章 未来へ~新しい顧客価値の創造へ向けたニチレイグループの取り組み鶏肉の血合いや打ち身

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