ニチレイ75年史
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■長期経営目標の実現に向けた重要事項 (マテリアリティ)を特定 当社は2019(令和元)年5月に発表した長期経営目標「2030年の姿」の実現に向け、ニチレイグループが取り組むべき5つの重要事項(マテリアリティ)を特定し、2020年6月、公表した。これは、当社グループをめぐる事業環境が今後大きく変化することを予想し、「2030年の姿」を実現するためには、事業の機会とリスクを的確に捉えた経営戦略の実行が必要と考え、その道筋の一つとして今後重点的に経営資源を投入すべき重要事項の特定を進めたものだった。特定に当たっては、社外専門家のアドバイスも受けながら、社外取締役も含めた役員全員が参画し、数度にわたる議論を行った。 特定した重要事項は、イノベーションを通じた新規事業領域の開拓、現在の中核事業である加工食品事業および低温物流事業のさらなる進化、商製品の安定供給に欠かせない素材調達機能の強化を図ること。そして、世界的な関心事でもある気候変動への取り組みについても重要事項の一つとして特定し、TCFD※6 へ賛同を表明の上、その枠組みを活用して進めることとした。またこうした取り組みを推進していくためには多様な人財が活躍できる人事制度と企業風土の醸成が必要であるとの認識の下、重要事項に織り込んだ。 なおマテリアリティの特定は、サステナビリティ関連の国際的なガイドラインで推奨されているとともに、日本取〈ありたい姿〉 イノベーションの推進により、お客様および社会の課題を解を貫かなくてはならない。この価値観は、ニチレイグループにおけるすべての事業活動の根幹である。(2)健全な利益を追求する 不公正・不当な利益は一切評価しない。コンプライアンスに違反する行為は、いとも簡単に事業継続を困難にし、企業の存続そのものを危うくする。ひとたび信頼を失えば、回復には途方もない時間がかかることを胸に深く刻み、フェアな競争に徹しなければならない。(3)透明性の高い経営を推進する すべてのステークホルダーから信頼されるため、誠実かつ公平な情報開示により説明責任を十分に果たして透明性の高い経営を推進し、企業価値を継続的に高めていく。(4)持続可能な社会の実現に取り組む 食と健康を支える企業として、常に人々のくらしと未来を見据えて社会課題の解決に貢献するとともに、経済的・社会的・環境的側面に配慮しながら事業活動に取り組み、持続可能な社会の実現を目指していく。(5)変革と創造に挑戦する 自由闊達な組織風土の中で失敗を恐れることなく、自己変革と新たな価値の創造に挑戦していく。決する新たな価値を創造し、人々の豊かな食生活と健康に貢献している。 国内事業においては、高付加価値化と資本効率の最大化を実現し、加工食品事業と低温物流事業でNo.1の高収益企業として確固たる地位を築いている。海外事業においては、M&Aとアライアンスにより規模とエリアを拡大し、海外売上高比率30%を達成している。また、新規事業の創出により新たな収益の柱を確立している。経営数値目標 売上高 海外売上高比率 売上高営業利益率 2030年度 ← 1兆円 ← 30% ← 8% ← 2018年度5,801億円14%5.1%155※6 Task Force on Climate-related Financial Disclosures:G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示および金融機関の対応をどのように行うかを検討するため、2015年に設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース」。企業等に対し、気候変動関連リスクおよび機会に関する、ガ第10章 未来へ~新しい顧客価値の創造へ向けたニチレイグループの取り組みバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標について開示することを推奨している。2020年7月27日時点で、世界中の1339の企業や機関がTCFDの提言に賛同し、日本では290の企業・機関が賛同の意を示している。■長期経営目標「2030年の姿」の策定 グループビジョンの制定と同時に、当社は「2030年の姿」としての長期経営目標を策定した。 今後、国内では本格的な人口減少に伴い消費市場の縮小が懸念されるが、世帯構成やライフスタイルの変化を背景とした時短ニーズの増大や消費形態の多様化などが生み出す新たな需要も見込まれること。海外では健康・高品質志向の高まりや、新興国における人口増加と冷凍インフラ整備の進展により、冷凍食品・低温物流の市場拡大が想定されること。一方、持続可能な社会の実現に向けて、企業に対する期待と要請は一層多様化、高度化していくことが確実であること。このような環境認識の下、新たな企業経営理念に基づき、2030年のグループ全体のありたい姿を策定した。

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