ニチレイ75年史
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~社会経済・食品業界の3年半~ 2019(令和元)年5月に令和の時代を迎えた日本経済は、雇用・所得環境の改善が続き、企業収益が高水準で推移する中、内需の柱である個人消費や設備投資が増加傾向で推移するなど、緩やかな回復基調が続いた。ただ、海外における中国経済の減速や情報関連財の調整の影響を受け、輸出や生産の一部に弱さがみられた。多くの日本企業がグローバルなサプライチェーンを展開している中で、通商問題や海外経済の動向、そして同年10月の消費税率引き上げ後(8%から10%へ)の国内消費の落ち込み懸念などが日本経済の先行きに不透明感をもたらした。さらに、同年12月以降、中国湖北省武漢市を中心に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)は、短期間のうちに世界に広がり、先行きは極めて厳しい状況となった。 一方で少子高齢化が進み、企業では人手不足感が高まっており、その対応が喫緊の課題となった。日本経済の潜在成長率を高めていくには、技術革新や人材投資などによって生産性を大幅に向上させるとともに、多様な人材に活躍の場を広げていくことの重要性が増している。 また食品業界では、ライフスタイルの変化により「食の外部化」が進展し、中食市場が拡大する一方、人件費や物流費の高騰、原材料価格の上昇などコストアップ要因が顕在化してきた。食品物流業界においては、労働力不足が深刻化し、省人化のための技術開発や機器導入に向けた取り組みが加速した。ウィズコロナ・アフターコロナの新常態への対応も求められている。~当社の3年半~ ニチレイグループは2018(平成30)年度に中期経営計画「POWER UP 2018」(2016~2018年度)の最終年度を迎え、主力事業のさらなる強化による持続的な利益成長と資本効率の向上に向けた施策を実施した。加工食品事業では主力商品を中心に経営資源を投下し、商品開発や販売活動に注力するとともに、継続的な生産性改善とコストダウンに努めた。低温物流事業では大都市圏を中心に旺盛な保管需要を着実に取り込むとともに、運送効率向上や庫内作業デジタル化などの業務革新に取り組んだ。この結果、グループ全体の売上高は5,801億4,100万円、営業利益は295億1,100万円となった。 2019年度は長期経営目標「2030年の姿」を制定し、中期経営計画「WeWill 2021」(2019~2021年度)がスタートした。計画の初年度は、主力事業を中心に将来の利益成長および基盤強化への投資を推進し、「豊かな食生活と健康を支える新たな価値の創造」に取り組んだ。主力の加工食品事業と低温物流事業が堅調に推移し、グループ全体の売上高は5,848億5,800万円、営業利益も310億3,500万円と、ともに前期を上回った。 「WeWill 2021」の2年目となった2020年度は、コロナ禍にあって、中食・内食の需要増加を背景に、加工食品は家庭用冷凍食品の販売が好調に推移し、低温物流ではTC事業が大幅に伸長したが、外食向けを中心に減少した需要の変化をカバーしきれず、グループ全体の売上高は5,727億5,700万円と2.1%の減収となった。だが、全社的なコストマネジメントの徹底も寄与して、営業利益は329億4,900万円と増益となった。また、同年度はグループの重要事項(マテリアリティ)の特定を行い、次期中期経営計画に反映すべく施策・KPI※1 の策定を開始したほか、ISO56002※2 に沿ったイノベーション・マネジメントシステム(IMS)の構築に着手。2030年とその先に向けて、当社グループの成長の基盤となる新しい価値の創造に向けた体制づくり、仕組みづくりに注力した年となった。 そして、2020年12月1日、ニチレイは創立75周年を迎えた。第2部152※1 Key Performance Indicator:重要業績評価指標/組織の目標を達成するための重要な業績評価の指標を意味し、達成状況を定点観測することで、目標達成に向けた組織のパフォーマンスの動向を把握できる。※2 イノベーション・マネジメントシステムに関する国際規格。この考え方を基に、経済産業省は、2019年10月、これまでの既存事業の維持だけでなく、新たなイノベーションを生み出すための変革を目指し挑戦する企業をより増やすべく、「日本企業における価値創造マネジメントに関する行動指針」を策定。第10章 2018(平成30)年~2021(令和3)年6月未来へ~新しい顧客価値の創造へ向けたニチレイグループの取り組みこの時期の概況

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