ニチレイ75年史
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~社会経済・食品業界の5年間~ 2013(平成25)年1月、前年暮れに発足した第2次安倍内閣は、デフレ経済からの脱却を目指して、大胆な金融緩和、機動的な財政出動、民間投資を喚起する成長戦略という「3本の矢」を柱とした「アベノミクス」を打ち出した。次々と実行に移された経済政策の効果や米国経済の回復などにより円安が進み、輸出産業を中心に企業収益は拡大、雇用情勢なども改善がみられた。2012年末に1万円だった日経平均株価は、2013年末に1万6,000円台となった。 ただ2014年4月の消費税率引き上げ(5%から8%へ)の影響から個人消費が落ち込むなど景気はいったん足踏み状態となり、2015年度は世界経済を牽引してきた中国の株式市場で上海総合指数が7月に急落するなど、金融市場の不確実性が増していった。 2016年度になると、経済対策による公共投資の増加や企業業績回復に伴って雇用・所得環境が改善し、個人消費も年度末にかけて持ち直しの動きがみられ、景気は緩やかな回復基調となった。2016年末の日経平均株価は1万9,000円台、2017年末には2万2,000円台に上昇した。 海外では、2016年6月の英国民投票による欧州連合離脱決定、2017年1月のトランプ米大統領就任などの動きがあった。 食品業界においては、東日本大震災後に家庭での喫食機会が増えた冷凍食品を中心に、中食・外食需要が堅調に推移したものの、消費者の生活防衛意識は依然として強く、急激な円安による調達コスト上昇を吸収できない状態が続いた。また低価格志向の一方で、食へのニーズはますます多様化し、簡便調理品や健康を訴求した商品の市場が拡大した。食品物流業界では、電力料金や燃油価格の高止まりが続き、貨物量の増加や安全規制強化により労働力不足が深刻化する中、各企業は省人化のための技術開発や機器導入を推進した。~当社の5年間~ アベノミクスに起因する円安、財政再建のための消費税率引き上げは、当社の収益にとってはマイナス要因となった。特に加工食品事業に大幅な利益圧迫があったものの、家庭用・業務用の冷凍食品需要の増加から、生産能力の拡大、生産体制の整備などにより、大幅増収へとつなげていった。また、海外からの輸入増による冷蔵倉庫需要のひっ迫もあり、大型冷蔵庫の設備拡張が急務となった。 こうしたことから、グループ中期経営計画「RISING 2015」(2013~2015年度)では、前中期経営計画「energy 2012」を300億円も上回る700億円超の大型設備投資を計画。加工食品事業における主要カテゴリー商品の生産力増強と、首都圏や関西圏など需要地における大型冷蔵倉庫の新増設などを実施した。その結果、2015年度は目標を大きく上回る成果を上げ、過去最高益とした。続くグループ中期経営計画「POWER UP 2018」(2016~2018年度)でも、積極的な設備投資、中核事業への経営資源の集中、海外事業の伸張を目指す姿勢は変えることなく、持続的な利益成長と資本効率の向上に向けた施策に取り組んだ。また、グループCSR基本方針として新たに制定した「ニチレイの約束」に基づき、「安全な商品とサービスの提供」「持続可能なサプライチェーンの構築」をはじめとした重要課題への対処も継続して行った。 グループ全体の売上高は2013年度の5,111億8,900万円から、2015年度に5,353億5,100万円、2017年度は5,680億3,200万円となり、同様に営業利益も157億8,900万円から215億8,300万円、298億9,700万円、経常利益は144億4,300万円から213億9,400万円、306億5,000万円と、それぞれ順調な伸びを見せた。 なお、加工食品事業の営業利益は、2013年度の33億9,800万円から、2015年度に79億5,900万円、2017年度に145億7,300万円と大きく伸びた。その背景には、生産体制の整備のほか、得意先業態別組織への改組により従来の商品・生産・営業等の機能別縦割り組織運営の弊害をなくしたこと、さらには大幅にリニューアルした「本格炒め炒飯」などの大型商品のヒットがあった。135第9章 さまざまな経営課題に的確に対応第9章 2013(平成25)年4月~2017(平成29)年さまざまな経営課題に的確に対応この時期の概況

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