ニチレイ75年史
153/320

■初の化粧品通信販売子会社、シルヴァン設立 ニチレイバイオサイエンスは、2009年4月、ニチレイグループとしては初となる化粧品の通信販売事業を営む子会社、株式会社シルヴァンを昭和電工株式会社と共同で設立した。 新会社は8月から「シルヴァン」シリーズの発売を開始した。これは、ニチレイグループが長年研究してきた彗星蘭(冷涼性の洋ラン オドントグロッサム)の一つ、シルヴァンの花から独自製法により抽出した「シルヴァンブルームエキス※13 」を配合しているのが特徴。このエキスの化粧品への配合は世界で初めてとなった。 ただ、化粧品業界の競争は激しく、また販売ノウハウも不足していたことから、2011年、清算するに至った。タートとなった。食品・物流という社会に不可欠な商品・サービスを提供するという使命のもと、被災した生産工場や物流拠点の早期稼働に努め、影響を最小限に抑えることに注力した。 震災後、最も大きな課題となったのが、放射性物質の拡散による放射能汚染への社会的な不安とどう向き合っていくかであった。ニチレイ品質保証部は、2011年5月、放射能の自主検査に関するガイドラインを確立し、11月には検査機器のNaI(T1)シンチレーションスペクトロメータを導入し、自社での検査体制を構築した。 なお、気仙沼にある主力工場が重大な被害を受けたヤヨイ食品株式会社に対して、震災後間もなく、ニチレイフーズはOEMによる代替製品供給を行うこととした。しかし、コスト面での厳しさから、現実的な支援には至らなかった。127※13 水分保持力が極めて高い成分を含み、保湿成分として広く用いられるヒアルロン酸の約2倍の保湿力を持つことが確認されている。※14 三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の巨大地震は、気象庁が「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」と命名。政府は地震による被害とこれに伴う原子力発電所事故による災害を総称して「東日本大震災」と呼称することとした。「シルヴァン」シリーズ※15 余震による被害も含めて、死者1万9,729人、行方不明者2,559人、負傷者6,233人。全壊した住宅12万1,996棟、半壊・一部破損103万1,402棟、床上・床下浸水1万1,703棟。住宅以外の公共建物その他の被害は10万6,586棟。(消防庁災害対策本部/2020年3月発表)第8章 世界同時不況・食への信頼失墜・東日本大震災からの回復9. 東日本大震災の影響と対応■東日本大震災の発生とその影響 2011(平成23)年3月11日に発生した東日本大震災※14 は、甚大な人的・物的被害※15 をもたらしたが、サプライチェーンの寸断や電力供給の制約、原子力災害などを通じて被災地以外にも広く経済的影響を及ぼし、社会生活全般に与えた打撃もまた大きかった。 食品・物流業界では、震災以降も内食・中食向けの需要が拡大し、円高により食料・原油の輸入価格の上昇は緩和されたものの、生活者の低価格志向の定着や供給量の回復などから企業間の販売競争は激化した。また、原子力発電所事故の影響は長く残り、夏場の電力不足やエネルギーコストの上昇も懸念され、企業を取り巻く環境は一層厳しさを増した。 このような状況の中、グループ中期経営計画「energy 2012」(2010~2012年度)の2年目は、震災の復旧からのス■節電策の実施 東日本大震災により、太平洋側の火力発電所などを中心に設備被害が発生したことに加え、東京電力福島第一原子力発電所が被災して放射性物質が漏れ出すという深刻な事態を受け、国内の原子力発電所が安全確保のための稼働停止を継続した。そのため、東京電力の供給能力は、約2,100万kWが欠落(約5,200万kWから約3,100万kWに約4割減)し、大幅な電力供給不足が生じた。 2011年3月は計画停電や他社からの電力融通などで乗り切ったが、電力需要が年間のピークに達する夏季には再び供給不足に陥る可能性が懸念された。経済産業省は同年5月、東北電力・東京電力管内において需要の一律15%削減を目指すことを発表。そのうち契約電力500kW以上の大口需要家に対しては、需要がピークに達する時間帯(9時~20時)において、前年同期の最大使用電力量から15%削減した電力量を上限とし、これを超過した場合は罰則を伴う電力使用制限令を7月に発動した。同令の発動は1973年のオイルショック以来、38年ぶりのことだった。 ニチレイグループでは、経済産業省 電力需給対策本部が要請する夏期の電力需給対策に則り、東北電力・東京電力管内で生産計画調整や空調機器の一部停止、消灯の徹底など各種の節電策を実施した。

元のページ  ../index.html#153

このブックを見る