ニチレイ75年史
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■中国産冷凍いんげんからの殺虫剤検出問題 2008年10月、ニチレイフーズが輸入した冷凍いんげんを食べたお客様が健康被害に遭われ、当該品から残留農薬基準を遥かに上回るジクロルボスが検出された。 第一報を受けて同社は直ちに調査を開始し、トレースバックシステムから該当商品の履歴を確認した。該当のいんげんは中国黒龍江省で収穫され、北緑食品有限公司で半製品に加工した後、煙台北海食品有限公司で製品として包装、山東省煙台港から輸出された。生産・流通の各工程における検査結果に問題はなく、農場や工場での当該殺虫剤の使用・保管はなかった。回収品からも殺虫剤等の検出はされず、警視庁の捜査で当該品の袋に穴が開いていたことなどから、故意の混入の可能性が高いとみられたが、真相の究明には至っていない。 ニチレイフーズでは、信頼できる現地企業とのパートナーシップに基づき、厳正な品質管理体制を確立してきた。問題を受け、さらなる品質管理の向上とともに、故意の異物混入などに対する「フードディフェンス」の視点から、監視カメラの運用強化や入場制限規制の厳格化など、一層の努力を重ねることとした。■品質保証体制&ブランド強化へ~日冷蔬菜会の設立 食品偽装表示や食の安全を脅かす問題が頻発する中、ニチレイフーズは冷凍野菜の安全性向上を目指して、日本の行政の検出基準より厳しい統一管理基準のもと、農場の選定、栽培・農薬管理、残留農薬検査などの取り組みを行ってきた。 2007(平成19)年5月には、品質保証体制強化の一環として、中国・台湾の9社で構成する「日冷蔬菜会」を設立、ニチレイフーズが指導し、互いのノウハウを共有することで品質管理レベルを向上させ、一層の安全性確保に努めることとした。■中国産冷凍餃子事件の影響 2007年末から翌2008年1月にかけて起こった「中国産冷凍餃子農薬混入事件」は、中国製食品への深刻な不信を招くとともに、日中の外交問題にも発展した。中国の食品会ばしばある。年金制度に関する会計制度の変更により、これまで10年で償却してきた退職給付債務を即時認識しなければならなくなり、年金資産の変動や想定利回りを下回る運用成績などに伴い、単年度の業績影響が大きくなる可能性があった。ニチレイは2005年4月に退職給付制度を見直しており、2011年3月までは規約型の確定給付企業年金8割、確定拠出年金または前払退職手当2割という比率で運用していた。会計制度の変更を前に、2011年4月、ニチレイは確定給付企業年金を全廃し、確定拠出年金を軸とした新制度へ切り替えた。2011年3月期には制度変更に伴う特別損失として66億円を計上したが、制度変更により、年金制度が会社の業績に与えるリスクは大幅に軽減された。 新たな制度では、確定拠出年金を中心に、希望する従業員には前払退職手当や退職一時金も選べるようにし、従業員のライフステージによって取り得る選択肢を増やした。ただ、退職金を適切に運用する責任は従業員が担うことになるため、新制度への移行を前に、対象となる従業員へ念入りな教育と説明を実施し、理解を促進した。その後も全国の事業所で定期的かつ継続的な教育を行った。この活動が評価され、2018年、NPO法人確定拠出年金教育協会から「DCエクセレントカンパニー表彰」を受賞した。社、天洋食品の臨時従業員が待遇に不満を抱き、冷凍餃子に注射器で農薬(有機リン系殺虫剤メタミドホス)を入れたもので、日本だけでなく中国でも被害者が出た。 ニチレイ品質保証部 食品安全センターは、各事業会社が販売する商品の安全性を確保するために、各種分析検査の実施、検査分析技術の開発に取り組んでいるが、この事件を受け、中国産原料、中国生産食品の検査体制をさらに強化した。119第8章 世界同時不況・食への信頼失墜・東日本大震災からの回復3. 食の不信への対応と信頼回復のために4. 加工食品事業の展開~国内外で■成長分野を模索~スマイルダイナーの設立 長引くデフレ下で、各食品メーカーは慢性的な安売り要求に苦しみ、いかに流通とwin‐winの関係を築けるかに腐心する時期が続いた。当社においても、ストレートな値上げを行って失敗した苦い経験から、価格改定をするにしても規格を変える、付加価値をつける、重点商品を絞るなどさまざまな工夫をしながら、流通との良好な関係構築に努めた。また、原材料の高騰や為替変動が大きく収益に影子会社を続々と設立

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