ニチレイ75年史
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~社会経済・食品業界の6年間~ 日本では緩やかな景気拡大が続く中、海外では米国のサブプライムローン問題の顕在化による金融市場の混乱や原油価格の高騰など、先行き不透明感が増していた。2008(平成20)年9月、米国の大手証券会社リーマン・ブラザーズの経営破綻は世界的な金融不安、リーマンショックを引き起こした。これは世界同時不況、世界金融危機とも呼ばれ、各国は協調して経済対策に取り組んだ。しかし、日本も欧米への輸出不振から2008年の国内総生産はマイナス成長を記録した。 その後、アジアを中心とした海外経済の改善や政府の経済対策の下支え効果により、日本経済が再び持ち直しに転じつつあった2011年3月11日、巨大地震が日本を襲った。「東日本大震災」である。同年6月、東日本大震災復興基本法が公布・施行され、翌2012年2月に復興庁が発足、復興に向けた取り組みが今なお続けられている。 日本経済は、2011年中に震災の影響による落ち込みからは回復基調となったが、欧州債務危機が深刻化し、円相場が歴史的な円高水準で推移するなど、回復の歩みは鈍かった。 この間、2009年8月の衆院選で民主党が圧勝し、9月に連立政権による鳩山内閣が誕生した。戦後初の野党第一党が単独過半数を獲得しての政権交代だったが、2012年12月の衆院選で自民党が政権を奪還、第2次安倍内閣が発足するなど、政治的にも混迷が続いた。 食品・流通関連業界では、原材料や燃油などのコスト上昇が企業収益を圧迫する厳しい状況が続く中、2007年は食品偽装表示や中国産冷凍餃子農薬混入事件など、生活者の食への安全・安心に対する信頼を損なう問題が相次いだ。また、生活者の節約志向から大手小売業者のプライベートブランド(PB)商品の拡大などにより低価格化が顕著になるとともに、荷主の在庫圧縮が定着し、保管・輸配送商材の争奪競争が激しさを増した。さらに、原子力発電所事故の影響から鶏肉や冷凍野菜などの食品輸入量が増加する一方、荷主の物流体制見直しや物流費抑制の動きが進み、夏場の電力不足やエネルギーコストの上昇も懸念されるなど、企業を取り巻く環境は依然として厳しかった。そして、メーカー間の事業統合や流通各社の経営統合、M&Aなど、食品関連企業の再編が活発化した時期でもあった。~当社の6年間~ 投資の抑制による財務体質の改善とグループ各社に権限を委譲して“遠心力”を効かせたグループ運営体制の確立に取り組んできた当社は、2007年4月、新たな「グループ中期経営計画」(~2009年度)をスタートした。「攻めと挑戦」をテーマに、それまでの投資抑制から反転、加工食品と低温物流を中核事業として経営資源を集中させ、積極的な投資による成長路線へと舵を切った。しかし、世界同時不況や為替変動の影響などから目標達成には及ばず、続く中期経営計画「energy 2012」(2010~2012年度)では厳しい事業環境を踏まえて現実的な目標を設定した。特に慢性的な安売りや原材料の高騰、為替の急激な変動などに悩む加工食品事業は商習慣の変更や価格改定に挑む一方、生産、営業の体制変更を試みた。低温物流事業では分社化により設立した各地域保管事業会社が地場の顧客との関係を深め集荷に注力するなどの施策で業績が回復し、大型物流センターの新設など積極策に転じた。国内外を問わず、さまざまなパートナーと提携し、関係会社や子会社を設立し、新たな事業や進出先の方向性を探る動きが活発化したのも、この時期だった。 また、2011年に起きた東日本大震災は甚大な被害をもたらし、当社の事業所でも被害が発生したが、食品のサプライチェーン継続に向けて各事業は奮闘した。 食への信頼失墜、世界同時不況、東日本大震災と次々に大きな問題が勃発する混迷期にあって、当社はぶれることなく経営品質の向上に取り組み続けた。2012年5月に発表したグループ中期経営ビジョン「GROWTH 2016」では、停滞が続く業績打破のためにストレッチした目標を提示し、混迷から抜け出す明瞭な方向性を示した。 2013年3月期は、調理冷凍食品の販売が好調に推移した加工食品事業、物流ネットワークの伸長や地域保管が貢献した低温物流事業がそれぞれ増収増益となり、グループ全体の売上高は4,701億2,600万円(前期比3.3%増)、営業利益は179億3,200万円(同10.8%増)、経常利益は172億200万円(同12.8%増)、当期純利益は98億2,300万円(同24.3%増)となった。115第8章 世界同時不況・食への信頼失墜・東日本大震災からの回復第8章 2007(平成19)年4月~2013(平成25)年3月世界同時不況・食への信頼失墜・東日本大震災からの回復この時期の概況

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