ニチレイ75年史
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■コープさが生活協同組合の「ニセ十勝牛」問題 1998(平成10)年8月、コープさが生活協同組合が前年4月から10月にわたり「十勝牛」として販売していた牛肉の一部が輸入牛肉だったことが、内部調査※12 の結果、判明した。「十勝牛」は1994年7月から販売を開始し、当社が納入していた。 この問題でコープさがは、1995年1月※13 から1997年10月までは全商品が輸入牛肉だったとして、当時の畜産担当者が納入・加工業者に輸入牛肉を使うよう指示するなど不当表示に深く関わっていたことを明らかにした。 当社は、生協の担当者の強い要請で輸入牛肉を十勝牛として納入したことを認めた上で、ニセ十勝牛の納入を明確に断らなかったことに落ち度があるとし、全国の支社長や関係役職者を集めて再発防止策を徹底。また企業としての社会的責任を重く受け止め、コープさがと組合員に謝罪するとともに、社内の関係者に厳しい処分を下した。(サードパーティーロジスティクス)事業※11 を担う合弁会社「株式会社ロジスティクス・プランナー」が発足した。出資比率は当社が56%、NTTデータが34%、伊藤忠商事が10%である。新会社の事業内容は、①物流効率化に向けた物流コンサルティングおよび物流システムの設計・導入、②SCM(サプライチェーン・マネジメント)の実現を図る物流の包括受託、③物流関連ポータルサイトの構築、この3つを柱とした。 サプライチェーンの効率化、およびそれを実現するための物流アウトソーシングの需要は高まりつつあり、中でも大きく成長が見込まれる分野の一つが3PL事業だった。新会社は、当社の持つ物流ノウハウ、NTTデータのIT、伊藤忠商事のビジネスネットワークというそれぞれの強みを生かすことで、2003年からの6年間で毎年約7兆円といわれる規模の物流改善市場に参入、3PL市場における飛躍的なサービス拡大を目指すこととした。第2部しい」「健康」「おいしさ」といったコンセプトを掲げ、従来型の畜産物生産とは異なる方向を模索していた。2000年に開催された第1回「畜産こだわりセミナー」は、当社の考え方や取り組みについて、取引先やマスメディアに知ってもらうことを目的として企画された。第1回のメインテーマは「循環型畜産生産」。当社畜産事業の方向性についてのプレゼンテーションのほか、「大自然ポーク」「NON-GMO飼料飼育&無投薬チキン」など「こだわり商品」の紹介、有識者の基調講演などで構成された。2004年まで毎年開催し、循環型生産や持続可能性といった問題意識をいち早く取り入れ、その後の事業展開につなげた。96※11 3PL事業とは、荷主である顧客企業から運送業務や保管業務を個別に受託するにとどまらず、調達から在庫管理、配送まで顧客の全物流業務の改善を提案し、再設計を行った上で、包括的に物流業務を受託・遂行する事業。3PL事業者にはアセット型とノンアセット型があり、アセット型は自社の物流設備を活用して3PLサービスを提供。ノンアセット型は他社の物流設備を利用して3PLサービスを提供する。※12 組合員から「おいしくない」などの苦情が寄せられたため、内部調査を行った。※13 その後の佐賀県の立ち入り検査により、発売当初から十勝牛ではなく輸入牛肉が納入されていたことを示す伝票が確認された。ErbB-2 EIA「ニチレイ」■「畜産こだわりセミナー」の開催 畜産部では1990年代後半から「安全・安心」「環境にやさ9. 畜産事業の動向10. バイオサイエンス事業の動向■診断薬事業を拡大 1997(平成9)年8月、乳がんの診断薬キットErbB-2 EIA「ニチレイ」を発売した。がん遺伝子の産物を直接測定する試薬で、国内ではこれが初めて。それまではがんにかかると増えるとされる生体物質を腫瘍マーカーとして測定するのが一般的だった。従来の測定法と組み合わせることで、診断精度の向上につなげた。 2001年には患者数が多く影響力の大きいインフルエンザ診断薬に参入し、バイオサイエンス事業を一層拡大することとした。米国バイオベンチャーのザイメテックス社が開発した簡易診断薬の日本での独占販売権を取得したもので、約20分でインフルエンザに感染しているかどうかが判断できる。従来の簡易診断薬は判断に1~2週間が必要で、その誤認率が30%程度だった。これに対し、新製品は同10%以下に抑えられると期待された。

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