ニチレイ75年史
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■西暦2000年問題への取り組み 西暦2000年問題とは、コンピューターが西暦年数の下2桁のみを扱っていることにより、1999年から2000年になる際、「00年」を「2000年」ではなく「1900年」と認識してしまうことで、さまざまな制御システムに誤作動が起こるという問題である。 当社は西暦2000年問題を社会的信用および業務継続性の維持の面から経営上の重要課題と位置づけ、全社的の変更や北米子会社の売却により5,600億600万円(前期比1.7%の減収)となったが、営業利益は185億9,600万円(同9.6%の増益)、経常利益も154億8,300万円(同32.2%の増益)といずれも過去最高益となった。ただ、退職給付会計の適用に伴う費用などに207億円余りの特別損失を計上したため、当期純利益は40億2,000万円(同7.1%の減益)となった。 所期の成果を上げたことで、2000年11月に新たなグループミッション・ビジョンを定めるとともに、「食のフロンティアカンパニー」をキーワードとしたグループ中期経営計画(2001~2003年度)を策定することになる。第2部な取り組みを行った。1997年1月から情報システム部を中心に基幹システムなどに関する調査・分析、また問題点への対応を進めた。1998年11月には常務取締役を推進委員長とする「西暦2000年問題対応プロジェクト」を発足し、グループ各社を含めた対応策の検討や進捗状況のフォローを行うとともに、その結果を取締役会に報告した。 基幹システムに関わるコンピューター機器の確認作業とソフトウエアの修正およびテストは1999年3月に完了。「危機管理計画書」の策定を通じて、①システムの誤作動や停止により生ずるさまざまな事態の想定、②影響範囲の調査、③リスク回避のための対策(ソフト・ハードの交換、代替方法の策定)などを行った。このような取り組みの結果、いずれの分野でも特段の問題は発生せずに終了した。92■ニチレイ型成果主義 「フレッシュ&フェアプログラム」導入 構造改革に取り組む中、2000年4月からは役職者を対象に、従来の年功制が強く残る賃金制度を改め、役割と成果に基づく付加価値重視の賃金制度を導入することにした。これは単なる賃金制度改定にとどまらず、目標管理制度、評価制度、人材開発、人事異動といった人事に関するすべての制度を体系的に一新するものだった。「会社とは、成果を生む場所であるとともに、フェアネスを実現し個人の成長を支援する場である」という考えの下、この総合的な新人事制度を「フレッシュ&フェアプログラム(FFプログラム)」と名付けた。 「フレッシュ」は新鮮さを大切にするニチレイの事業を表すキーワードであるとともに、新世紀を迎えて新しく生まれ変わるニチレイを表現した。「フェア」は年齢、性別、学歴、入社年度など仕事に直接関係のない属性によってではなく、明確な基準による本人や周囲が納得できるような透明な評価と処遇を表した。新制度は役職者から適用し、1年後をめどに一般社員への導入を検討することとした。 なお、このとき導入された役職登用公募制は、現在に引き継がれている。5. 重荷となった3つの経営課題 ─北米事業・ユキワ・京都ホテル■北米事業の再編 北米事業は1980年代後半から、それまでの農・水・畜産部の集荷機能に加え、加工食品の製造、米国内での販売を目的として、主として買収により事業基盤を拡充してきた。また日本向けの素材調達先として、スケトウダラのすり身のアラスカ・オーシャン・シーフーズやチルドビーフのシンプロットミートプロダクトを現地との合弁により運営してきた。 しかし、ビーフジャーキーのテングを除き、いずれの事業も思うように成果を上げることができず、北米事業全般で財務体質の悪化が課題となっていた。グローバル化が進む中、当社事業基盤の海外への拡大と加工食品事業の海外市場での展開を目標に、これまで経営資源を投入してきた。だが、事業を継続しても当面の業績向上が見込めず、一方で事業運営の構造改革に向けて国内事業への資源の集中を急ぐ必要もあったことから、事業の売却・縮小を検討するに至った。 1998(平成10)年12月末での各社の資産状況を洗い直し再評価した結果、各社が抱える損失合計額は100億円余りに上り、これを1998年度末決算で処理することにした。 さらに1999年度は経営資源集中化の観点から、ニチレイ・フーズ・アメリカの営業譲渡や、シーウォッチ・インターナショナルの株式売却など、北米における食品製造・販売

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