結核感染検査キット「クォンティフェロンTB-2G」診断薬輸入承認取得のお知らせ

プレスリリース 2005年

平成17年4月15日
報道関係者各位
株式会社ニチレイ
結核感染検査キット「クォンティフェロンTB-2G」
診断薬輸入承認取得のお知らせ
当社の子会社である株式会社ニチレイバイオサイエンス(代表取締役社長 荒剛史)が体外診断用医薬品として申請していた結核感染検査キット、クォンティフェロンTB-2G(QuantiFERON TB-2G)が4月14日付で承認を受けましたのでお知らせします。
1.クォンティフェロンTB-2Gの概要
クォンティフェロンTB-2G はオーストラリアのセレスティス社が開発した結核感染検査キットで、当社は平成14年6月から平成15年3月まで臨床性能試験を実施しました。平成15年5月に、輸入承認申請を行い、4月14日付で承認を受けました。クォンティフェロンTB-2Gは、BCG ワクチン接種の影響を受けずに結核感染の有無を判別できる検査キットであり、結核の診断補助として、X線所見や喀痰塗抹標本等で結核を確定できず、他の臨床所見等で、結核を疑う者、あるいは、潜在性結核感染の診断補助として、集団発生の際の感染性結核患者との接触者、特に結核発病の危険度が高い疾病を有する患者(糖尿病・腎疾患)、感染性結核患者との接触機会の多い医療従事者等に対して使用されます。

2.日本における結核と結核感染検査法に関して
日本における結核病罹患者数は年間約3万人で、平成11年7月に当時の厚生省から緊急事態宣言が出されるなどその感染蔓延の阻止が急務となっています。現在、結核病の発症(活動性結核)に対する診断薬は多種存在しますが、感染の有無を診断する方法はツベルクリン反応による検査が唯一です。しかしながら、ツベルクリン反応はBCG ワクチン接種の影響を受け、結核菌に感染していないにもかかわらず陽性(偽陽性)となることから、臨床の現場で問題となっています。平成17年4月1日施行の改正結核予防法によりBCG接種が乳児だけとなりましたが、すでにBCG接種とツベルクリン反応検査を複数回受けてきた大部分の世代はツベルクリン反応検査の正確度はそれほど期待できないと考えられています。加えて、医療従事者に対する結核予防のためのBCG 接種を中止するわけではないのでこれらの人々における結核感染診断のためのツベルクリン反応検査は依然としてBCGの影響をうけることになります。クォンティフェロンTB-2GはBCG ワクチン接種の影響を受けずに結核感染の有無を判別できる検査キットですので、診断薬としての意義と今後の市場性は有望と考えられます。

3.技術背景説明
クォンティフェロンTB-2Gキットは、細胞性免疫反応(注1)の指標であるインターフェロンガンマ(注2)を測定する試薬に刺激抗原(注3)が構成品として添付されたキットです。被験者から得られた血液検体に刺激抗原を添加して18時間程度培養すると、血液中に存在するTリンパ球がこの添加刺激抗原に免疫応答すればインターフェロンガンマを産生します。したがいまして、培養後にインターフェロンガンマを定量分析することにより、刺激抗原に対する生体の細胞性免疫反応の有無あるいは強度を試験管内試験として判定できます。
ヒトはいったん結核菌に感染すると、結核病を発症しなくても、生体内のTリンパ球が記憶し、外部から再び結核菌あるいはそれと同様な抗原が入り込むと細胞性免疫として応答します。この細胞性免疫応答の一つの指標がTリンパ球のインターフェロンガンマ産生です。
現在、結核感染の診断に用いられているツベルクリン反応検査は、ヒト型結核菌からの精製物(注4)(以下、PPD という。)を抗原とした皮膚反応検査です。PPD とBCG ワクチンは、それぞれに共通する蛋白が存在しており、BCG 接種したヒトに対してツベルクリン反応検査を結核感染の診断として実施すると、結核菌感染していないにもかかわらず陽性(偽陽性)と判定される頻度が高くなります。しかしながら、最近の分子生物学的手法を用いた検討により、BCG とヒト型結核菌のアミノ酸配列の非相同部分が同定されてきました。クォンティフェロンTB-2Gはこの非相同部分を刺激抗原としたキットであり、被験者のBCG ワクチン接種の有無にまったく係わりなく試験を行うことができます。
(注1) 血清抗体を作らず細胞が直接作用して発現する免疫反応。主として白血球の一種であるT リンパ球による。
(注2) リンパ球が活性化物質や特異抗原に出会ったとき産生する物質のこと。
(注3) リンパ球に細胞性免疫反応を特異的に惹起させる抗原のこと。
(注4) ツベルクリン反応を惹起させる結核菌培養ろ液から精製した物質(精製タンパク誘導物質;purified protein derivative の略)のこと。
 
4.販売契約の概要
当社は4月1日をもちまして持株会社体制に移行いたしました。当輸入承認も含め、バイオサイエンス事業を100%子会社である株式会社ニチレイバイオサイエンスが承継いたしました。株式会社ニチレイバイオサイエンスは、クォンティフェロンTB-2Gの日本における独占販売権を有しており、結核関連製品の販売経験豊かな株式会社日本ビーシージーサプライ(東京都文京区、萩原昇社長)を販売元として発売致します。1キットは40検体を測定でき、初年度販売目標を3億円としています。

5.Cellestis Ltd.の概要
Cellestis Ltd.は、クォンティフェロン技術開発を目的に創立され、オーストラリア証券取引所に2001年に上場しました。製品の日本名クォンティフェロンTB-2Gは「QuantiFERON-TB GOLD」として現在米国とヨーロッパで販売されています。なお、Cellestis 社は日本の臨床データをもとにQuantiFERON-TB GOLDを米国FDAに体外診断薬の承認を申請し、2004年12月に承認されております。
(1) 本社所在地: オーストラリア国ビクトリア州カーネーギー
(2) 代表者: Anthony Radford(CEO)
(3) 資本金: 28,000 千オーストラリアドル
(4) 事業内容: 診断薬の製造販売
(5) 当社との関係: なし
(6) Cellestis Ltd.のホームページ: http://www.cellestis.com/
 
6.株式会社ニチレイバイオサイエンスの概要
株式会社ニチレイが、4月1日に持株会社体制に移行したのに伴い、同日新設分割によって設立されました。株式会社ニチレイのバイオサイエンス事業を承継いたしております。
(1) 本社所在地:東京都中央区
(2) 代表者:荒剛史
(3) 資本金:450百万円
(4) 事業内容:診断薬・化粧品原料の製造・販売
 
7.株式会社日本ビーシージーサプライの概要
(1) 本社所在地:東京都文京区
(2) 代表者:萩原昇
(3) 資本金:10百万円
(4) 事業内容:乾燥BCGワクチン、精製ツベルクリン、体外診断用医薬品の販売
 
8.この件に関するお問合せ先
当リリースについて (株)ニチレイ 広報IR部 03-3248-2235
当製品について (株)ニチレイバイオサイエンス 03-3248-2207
 
以上