ニチレイグループの新中期経営計画について

IRニュース 2004年

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※平成16年6月25日付で発表した決算短信の訂正に伴い、下記【計画数値】中の平成16年3月期一株当たり当期純利益の数値を訂正しております。
平成16年4月30日
各  位
 
  会 社 名
代 表 者 名
本社所在地
コード番号
上場取引所
株式会社 ニチレイ
代表取締役社長 浦野 光人
東京都中央区築地六丁目19番20号
2871
東京、大阪(各市場第一部)
ニチレイグループの新中期経営計画について
 
当社は、平成16年度から平成18年度に至る新中期経営計画を策定いたしましたので、概要につきお知らせいたします。
 

I.前中期経営計画(平成13年度〜平成15年度)について
当社は前中期経営計画において、「食」を通じて人々の生活に役立ち信頼される企業となるため、ニチレイグループの経営理念として次のようなグループミッション・ビジョンを策定いたしました。
 
<ミッション(使命・存在意義)>
「くらしを見つめ、人々に心の満足を提供する」
ニチレイグループは、人々のくらしに本当に役立つ商品やサービスを一所懸命に創り出し、健康でこころの豊かな生活の実現に貢献します。
<ビジョン(目指す姿)>
ニチレイグループは、卓越した食品と物流のネットワークを備える『食のフロンティアカンパニー』として、お客様にご満足いただける優れた品質と価値ある商品・サービスを創造・提供し、広く好感と信頼を寄せられる企業として、社会とともに成長します。
激変する事業環境の中でこうした理念を実現していくための具体的な経営課題として、「事業ドメインの再編と事業ユニット制の導入」「コア事業の成長」「資本効率の追求と資本構成の適正化」を定め、遂行してまいりました。
各事業の自立経営という点では、平成15年4月に導入した社内カンパニー制によって大きく前進いたしました。計画期間中、収益性を維持しつつ、使用資産の見直し・投資の抑制・運転資金枠管理等による資産圧縮を通じて、資本の効率的使用に努めた結果、有利子負債も大幅に削減することができましたが、一方で加工食品・低温物流の両コア事業では、計画していた成長を達成できませんでした。特に低温物流事業は、資本回転の低い保管中心の事業構造から、サードパーティロジスティクス(3PL) ※1 や輸配送事業を強化し、より資本回転の高い事業構造への変化を実現することが十分にはできませんでした。


II.新中期経営計画の全体戦略と計画数値
新しい中期経営計画では、引き続き経営理念に立脚して前中期経営計画での達成状況を踏まえた上で、次のグループ全体戦略を実施いたします。
 
1. 前中期経営計画である程度達成された「資本の効率的使用」を意識しつつスリムで強靭な企業体質をベースに、事業の成長戦略を迅速に実施する。
※具体的な施策は、III.事業戦略 を参照
2. 事業戦略遂行の基盤となるグループ運営体制を確立する。
 
(1)カンパニーの自立促進に向けた権限委譲と責任体制の確立
  a. 各カンパニーの自立促進に向け、大幅な権限委譲を図る。
  b. コーポレートは各カンパニーの戦略遂行をモニタリングし、グループ全体最適の視点で経営資源の配分を行う。
(2)企業ブランド価値の向上と推進
  a. 各カンパニーが、提供する商品・サービス品質の「安全・安心」を最優先課題として実現することにより、企業ブランド価値の向上を目指す。
(3)ニチレイグループが果たすべき社会的責任の明確化と推進
  a. 企業市民として地域・社会と共存していくため、ニチレイグループとしての社会的責任を明確化し、取り組みを推進する。
(4)グループ従業員が活き活きと働ける職場環境の整備


【計画数値】
<グループ全体の計画数値> 単位:億円
  平成16年3月期 平成19年3月期 増減率
売 上 高
4,966
5,370
8%
営業利益
139
203
46%
経常利益
120
195
63%
当期純利益
▲18
107
-
一株当たり当期純利益
-6円28銭
34円47銭
-
有利子負債
1,243
970以下
-22%
平成19年3月期の1株当たり当期純利益は、平成19年3月期の当期純利益を平成16年3月期末の発行済株式数
(自己株式を除く)で除して算出しております。


 
<セグメント別売上高・営業利益> 単位:億円
  売上高 営業利益
セグメント 平成16年3月期 平成19年3月期 増減率 平成16年3月期 平成19年3月期 増減率
加工食品
1,700
1,950
15%
65
88
35%
水産
910
1,155
27%
▲8
16
-
畜産
758
866
14%
11
10
-9%
低温物流
1,138
1,480
30%
51
85
67%
不動産
79
70
-11%
54
40
-26%
食品卸売
713
-
-
3
-
-
その他事業
83
99
19%
12
9
-25%
(消去・全社)
▲419
▲250
-
▲50
▲45
-
合計
4,966
5,370
8%
139
203
46%
平成16年3月期上半期まで株式会社ユキワが連結子会社であったことによる影響額は、売上高535億円、営業
利益3億円です。


III.事業戦略
全体戦略に基き、各カンパニーは以下の事業戦略を遂行いたします。
 
1. 加工食品事業
加工食品事業はこれまで、生産体制の再編・単品別の収益管理・物流再構築といった施策を通じて、利益基盤の確立を図ってまいりました。新計画では加工食品事業のドメインを、生活者にお惣菜を提供する事業(以下 「お惣菜」事業)として捉え直し、従来は取り組みの弱かった市場の開拓やチルド食品開発なども視野に置いて事業領域を拡大しながら、売上高・営業利益双方の高い成長を図ります。
また当社がパイオニアとしてわが国に導入したアセロラの効果・効能などを徹底的に追求し、オンリーワンビジネスとして他者の追随を許さないレベルにまで用途開発・商品開発を行い、大幅な売上増を目指します。
 
(1)「お惣菜」事業として事業ドメインを捉え直し成長を実現
  a. 家庭用調理冷凍食品は価格競争に巻き込まれず採算を維持しつつ市場並の売上拡大を目標とする。
  「お弁当にGood!」をはじめとする確固たるブランド群の確立や、「上等洋食」のような非価格競争力を持った商品群の展開を図る。
  b. 業務用冷凍食品は、市場全体の伸びは無いと予想されるなかで、高めの成長を実現する。
 
新カテゴリ戦略(攻めるべき市場×得意商品群) ※2 を発展させる。当社が優位を持っている分野に加え、当社にとって未開拓の市場にも積極的に展開し、大幅なシェア拡大を狙う。
  c. 成長を支えるコスト戦略を実施する。
  売上拡大による増産分をグループ内の生産会社に集中させることで、操業度を改善し、製造コストの低減を図る。
  商品ごとに原料受入から出荷に至る各工程を徹底的に見直し低コスト化を実現する。
  特売や需要予測に関しての営業と生産の情報連携により、生産・物流費を削減する。
  d. 温度帯を超えた「お惣菜」市場での商品展開を行う。
  冷凍食品市場のみならず、成長著しいチルド食品市場に参入する。
(2)オンリーワンとしてのアセロラ商品群強化
  a. パイオニアとしてオンリーワンブランドを確立する。
  他社の追随を許さぬ商品ラインナップとブランドの確立により売上拡大を図る。
  b. アセロラの可能性を探求する。
  飲料原料のみならず機能性物質に至るまでアセロラの可能性を探求し、商品化していく。
(3)新規事業の種まき
  a. 中国を市場として捉え現地での商品販売を拡大する。
  b. 生活者との直販ビジネスを構築し、ウェルネスやこだわり商品を拡販する。
2. 水産事業
水産事業は、資本の効率的使用に努め、取扱を得意商材に集中することにより収益力の向上を図ってまいりました。新計画では、これまでの取り組みに加え、より市況の影響を受けにくく安定した利益が獲得できる体質への改善を目指します。
(1)小売・生協・惣菜・外食産業といった川下の業態への販売を強化
(2)高品質の「こだわり商品」がベースとなり、ユーザが使いやすい規格の「加工品」の開発・販売に注力
(3)海外の川下業態に向けても販売を強化
3. 畜産事業
畜産事業は、資本の効率的使用に努め、「おいしさ」「安全」「安心」「健康」、そして「環境にやさしい」をキーワードにさまざまなこだわりを持つ特長ある素材を重点的に取り扱うことにより収益力の向上を図ってまいりました。新計画では、これまでの取り組みに加え、顧客視点に立った流通加工品の展開によって体質強化を目指します。
(1)特長ある畜産素材の継続的な開拓・導入の推進
(2)顧客との共同開発を中心にした流通加工品の展開
4. 低温物流事業
生産拠点の海外移転、サプライチェーンマネジメントに基く荷主の在庫拠点の集約、業界の過剰な庫腹等により、従来主力であった保管事業をめぐる事業環境は大変厳しくなっています。一方で川下・川中を起点とする物流改革は活発に進んでおり、事業機会も増えています。こうした状況に的確に対応するため、市場の捉え直しとそれに合わせた運営体制の再編・サービス開発を行ってまいります。
 
(1)国内の低温物流の事業領域を次の二つに分けて捉え、それぞれに機動的に対応できるよう分社化を実施
  a. 成長領域である物流ネットワーク事業
  b. 成熟領域である地域保管事業
(2)川中・川下における機能優位の仕組み構築や物流共同化などの旺盛な物流改革ニーズを背景に、成長領域である
物流ネットワーク事業を強化
  a. 3PL事業による新規案件開拓を推進
  b. 大手流通向け新規拠点開設
  c. センター前センター物流 ※3 、フローズンセンターといった新機能の提供
  d. 物流センター用配送車両の高回転化、センター汎用化 ※4 による資本効率向上
  e. 物流ネットワークの充実を前提にした事業者向け小口輸配送サービスの展開
  f. 名糖運輸株式会社とのアライアンス強化によるサービス・能力の拡充
(3)地域保管事業は顧客ニーズ対応とコスト競争力を実現
  a. 地場での集荷を強化し、迅速な意思決定ときめ細やかなサービスを提供
  b. ローコスト体質への転換
  c. 物流ネットワーク事業各社との連携でビジネスチャンスを拡大
(4)海外事業展開
  a. 欧州低温物流事業の東欧への事業展開
  b. 上海での流通型事業拡大
  c. 中国の他地域、インド他アジア地域への展開模索


IV.その他の事業
1. バイオサイエンス事業
(1)試薬・化粧品原料をはじめとする既存事業の強化
(2)抗体医薬の治験薬製造事業及び抗体医薬メーカーへの培地販売の強化
2. フラワー事業
(1)オドントグロッサム ※5 (洋蘭)の主産地形成による苗市場の拡大
(2)開花技術の確立・新品種開発のスピードアップ
3. コーポレートサービス
(1)経営支援機能の充実
(2)シェアードサービス ※6 の外販受託に向けたビジネスモデル構築


IV.本件についての問い合わせ先
財務・IR広報部(IR広報担当) 03-3248-2235
 
以  上


【用語】
※1 サードパーティロジスティクス(3PL)
荷主である顧客企業から、調達、在庫管理、配送にいたるまで顧客の全物流業務の改善を提案し、再設計を行った上で、包括的に物流業務を受託・遂行する事業。
 
※2 新カテゴリ戦略(攻めるべき市場×得意商品群)
従来、当社はマーケットと商品群の組み合わせによって「市販用・チキン製品」「業務用・米飯製品」といった括りで戦略を考えていた。新カテゴリ戦略は、その進化形で、「家庭用・鶏唐揚」「外食用・ピラフ類」のようにカテゴリを細分化して捉え、それぞれの拡販余地と潜在収益力を分析した上で戦略ポジションを明確にし、最適な施策を実行する戦略のこと。
 
※3 センター前センター物流
現在、大手流通業者を中心に、店舗別に仕分けして配送するための専用センターが相当数できており、ここに納品するためのメーカーの負担が増大している。センター前センターは、こうした各社の専用センターへ仕分けして納品する機能を果たす。
 
※4 センター汎用化
大手流通業者などが設けている店舗別仕分け配送のための物流センターは、自ら使用するためだけに設置された専用センターであることが多い。当社は多くの荷主と取引があるため、一つの物流センターで、使用時間帯の異なる取引先の物流業務を組み合わせ、センターの汎用化を進めることでセンターの稼動率を高め、コストを下げることが可能と考えている。
 
※5 オドントグロッサム
洋蘭の一種(和名 彗星蘭)で、冷涼な気候を好み、花のバラエティに富んでいる。生育に時間がかかり、増やすことが難しいという特徴から、イギリスでは上流階級を中心に愛好されていた。当社は細胞培養技術による苗の量産化に成功した。ニチレイは現在、15品種について種苗法に基く品種登録を済ませている。
 
※6 シェアードサービス
同一グループ内の企業で共通する経理や人事といった間接業務を標準化するとともに、一ヶ所に集約してサービスを提供すること。